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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-119-

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 囚われの動物たち。
「しねーよ。逃がしてやれ。電気ロックは外れてるぜ」
 相原のこの言にレムリアは思わず笑顔を作り、唇から指を離した。
 判ってくれる。この人はまるで年の離れた兄のよう。
「ありがと」
 言って両の手をパチンと鳴らし、二人がかりで動物たちを逃がし始める。
「病原菌というより、神経系の電気制御の実験に使われていたみたい」
 足もとを逃げ去って行く動物たちを見ながら、レムリアは言った。本当は真っ先に確認すべきことだったが、彼らが密閉されていないことと、テレパシーの反応からそう判断。
「これ勝手に逃げてくと見ていいのか?」
 揃って一方向に走る動物たちに相原が言った。
「大丈夫。本能的に逃げる方向を知ってる」
 大型動物も放しに掛かる。
 その時。
「あっ!」
 レムリアが気付いて声を出すより早く、パンという乾いた破裂音がして、相原が背後から突き飛ばされたようになった。
 拳銃で撃たれたのである。防弾なのでケガにはならないが、応じたエネルギでぶん殴られるに等しい。
「(意図したこと形をなさず)」
 発砲者が2発目の引き金を引くより早く、レムリアはそういう意味の言葉を発し、口元に人差し指を当て、次いで真っ直ぐ相手に向けた。
 白一色の放射線防護着の男が、銃を構え凝固している。レムリアの背後では馬が嘶き前足を振り上げて暴れる。
 白衣に対する恐怖がそうさせているのだとレムリアは気付いた。
〈大丈夫だから〉
 メッセージを送るが、死にものぐるいの馬の意識には届いていない。
 呼びかけ続けながら、発砲者を見据える。その顔は件の写真パネルで見覚えがあった。
 写真の真ん中にいた男。所長だ。
 狂気の中枢、の一つ。
 右手の拳銃に対し、左手には大きなジュラルミンケース。
 
(つづく)

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