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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-125-

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 それは半分諦めに近い認識かも知れぬ。この男は何がどうあれ、自分に責任を負わすような言動はするまい。
「ギブアンドテイクじゃ、無いでしょうが」
 相原はそっと言い、続けて。
「お前さんは命がけで守るに足る娘だ。それだけさ」
「そんなの余計に気が引ける。あなたに全部背負い込ませているような気がする」
 レムリアは反射的にそう言った。相原は驚いたように目をまるくした。
「相手を巻き込みたくない。ってそりゃ立派な日本人のメンタリティだぞ」
「だとしたら光栄。知ってる?日本の人たちの道徳心って聖人のそれと同じって評価されてるんだよ。無宗教と言われているのにどうして?ってミステリーなわけ」
「単に汚いことが嫌いなだけさ」
 相原は言い、「そういうことなら」と前置きし、う~んと唸り、首をひねり。
 レムリアに目を戻す。
「こうしよう。願いを一つ聞いてくれ」
「……なに?」
 レムリアはじっと相原を見、戻ってきた目線にドキッとした。
「今度、何かの拍子に日本に来たときでいい、一日俺と付き合え」
 相原は言うと、目線を外して耳の下をポリポリ掻いた。
 その頬が赤らむ。
 背後でアリスタルコスがプッと放屁みたいな音を立てて吹き出した。
「こいつは驚いた」
「黙れ大男」
「通じてないぜメガネのあんちゃん」
 そこでレムリアはある可能性に気付く。
 〝この男の自分に対する態度雰囲気は他の大人たちと明確に異なる〟
 でも、まさか。
 そう思いながら相原を見ていると、相原はため息と共に絆創膏だらけの手を持ち上げ、ネットの掛かった頭をポリポリ掻いた。
「かさぶた痒いの?」
 訊いたら、アリスタルコスが大笑い。
「黙れ偉丈夫」
 相原は咳払いすると、レムリアに顔を近づけ、目を覗き込んだ。
「デートしろって言ってんの。朝のコーヒーから夕食まで。すてきな娘と一日一緒にいたい」
「え?」
 心臓のリズムが少しずれたと自分で判った。
 彼が自分と等身大に見えた気がした。
「いいよ。判った。東京あちこち連れてって」
 レムリアは言うと、くすぐったい気持ちになって笑ってしまった。
 
(つづく)

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