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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-127-完結

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「いいえ、まだ合衆国に本ボシ黒幕が残ってます」
 返す相原の手をセレネは繊細な指で握った。相原は少し照れたようだ。
「いつか正式にお礼に伺います。その時はあなたのお好みの場所へお連れいたしましょう。海外……いや、やはり宇宙ですよね。そうですね、太陽系一周ツアーなどいかがですか?」
「それはすごい。いいんですか?」
 褒め言葉をクールにやり過ごしてきた相原が目を瞠った。
 21世紀初頭現在、億円単位の金額で宇宙への〝物見遊山〟は可能ではある。しかし所詮無重力エリアに出る程度。比して映像や望遠鏡でしか見たことのない惑星達をそばに行って観察する。
 相原はふう、と言い、ゆっくりまばたきし。
「でもその前に黒幕を」
 するとセレネは頷き、ニッコリ笑った。
「それで良いと思います。まぁ後々と言うことで。さぁ、私達はこの辺で失礼します」
 繊手が相原の手を離れた。
「はい」
 相原は頷いた。
「じゃあね~」
 甲板の上から手を振るのはレムリア。相原は彼女に手を振って応じ、男達……大男兄弟やドクターとは、目線を交わし、頷き合った。
 スロープが格納され、乗降口が閉まる。
 相原は少々後ろに下がる。暴風が発生して船を浮かす。
 船首が天を向き、高度を取る。
 方向を変え、進路を西へ向ける。空気圧浮上から光子推進に移る。
 加速して行く。船体が白い光に包まれ、やがて流れ星と化す。
 素晴らしい速度で夜空の彼方へと飛び去る。その光輝が見えなくなるまで、相原はじっと、目で追った。
「いいのかな。やべえなオレ」
 
相原補足・アメリカの雑誌「NOW」のスクープ記事より、
     研究所から救出されたイスラエルの男性ヤコブ氏の手記(一部抜粋)
 
……私達はモルヒネで朦朧としていたので詳しいことは憶えていません。
でも、なぜか全員に共通の記憶があるのです。
それは聖人ノアでなく、少女の姿をした天使が空飛ぶ箱船で私達を救い出し、星の海を運んで行く夢のような有様です。
その天使は羽根は持っていません。ただ、黒曜石のように輝く、美しい目をしていました……。
 
アルゴ・ムーンライト・プロジェクト~第2部・了~
 
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