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10Minutes10Years【前】

 俺が座った目の前で、その娘はやにわに制服をたくし上げた。
 いつも同じ電車の同じ場所に乗ってくる、どう見ても女子高校生である。どうやらスカートをミニ仕様に改造する作業らしい。引っ張り上げてベルトで締めて、余った部分はくるくる丸めて上着で隠す。作業の実演は勿論初めて。
 しかしそのミニスカートと言い、覗く男の方が悪いという風潮まかり通っているが、この手の大和撫子のデリカシー崩壊は問題にせずに良いのか。
 さておき困るのは目のやり場。通勤も汽車旅気分の鉄道好きには目線を逸らす本も無い。仕方が無いので携帯電話。ツイッターにレスは無し、ネットの掲示板で電車ネタ探し。
 彼女終わったかい……ところがどっこいバサッと降ってきた彼女の髪の毛。前かがみになって足もとに置いたカバンをゴソゴソ。胸のサイズを誤魔化すために実力以上の乳バンドを付ける場合もと聞くが、結果は予期せぬ眼福ラッキースケベ……それこそネット掲示板のスラングだが、
「あのねぇ髪の毛」
 このタイミングなら、髪が邪魔、で論が立つ。果たして彼女はハッとしたように顔を上げた。
 ところがどっこい。携帯持ったオレの手をむんずと掴む別の手あり。指輪だらけでブレスがじゃらじゃら。荷棚にしこたまデパートの紙袋。
「お嬢さん、この人チカンよ」
「はぁ?」
 どこが、と携帯画面を見せたはいいが、ネット掲示板はアダルト広告の巣窟。
「ほらいやらしい。隠したってダメよ。私見てたんだから」
 何をだ。
 周囲がざわめき、非難の目線とコソコソヒソヒソ。フェミニズムの現代、真偽によらずチカンの嫌疑は人生崩壊。
 落ち着け。
「人聞きの悪い。てなわけで君のコメントをお願いしたいところなんだが」
 彼女はおろおろしている。さもあろう。自分ではトラブルを招いたつもりはないからだ。
「脅しに乗っちゃダメよ。おばさんが証言してあげるから出るとこ出た方がいいわよ」
「名誉毀損って知ってるかい」
 さすがにカチンと来てジロリと目線をやったら、彼女が反応した。
「あの……この人、父です」
 ほえ。
 
【後】

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