【魔法少女レムリアシリーズ】博士と助手(但し魔法使い)と-02-
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「いや、これは失敗した時の予備が出てきちゃって……」
「この子がそっち移動するのに“予備”って何事ですかっ!」
爆笑。
「戻しなさい」
「へ~い」
と、相原がハトを“ボックス”に戻すと、レムリアの方がハト2羽になり、相原のボックスは空っぽ、というシカケ。
すなわちそれはそれでテレポーテーションであり、子ども達は当然拍手してくれたのだが。
最後列の女の子が一人、レムリアに目を戻さず、相原の方をじっと見ている。
体格的にはレムリアとさして変わらないが、顔立ちは幼い。目が合うと小さな笑顔。相原はフッと笑って見せ、その子と他の子の差違に気付く。
その会場は施設のイベントホールであり、子ども達は大道芸の見物よろしく、レムリアから一定の距離をおいて輪をなして座っている。が、彼女だけ、冥王星のように輪から更に離れて座っているのだ。……明らかに打ち解けていないのである。
時間が来て幕。白衣の二人は施設の所長氏に呼ばれ、応接室でお茶を頂く。
「いやぁこっちも笑わせてもらいましたワッハッハ」
七福神の“布袋様”がスーツを着たかの如き所長氏が豪快に笑った。
「しかし鮮やかですね。手品というより魔法かと思いますわ。おかげさまで“そのちゃん”が笑ったのを初めて見ました」
布袋所長は真顔で言い、自らの茶を口に含んだ。
「輪から離れた彼女ですね」
先に言ったのはレムリア。気付いていたのである。
「学ばかり見てた」
レムリアは相原をチラリと見、付け加えた。
「僕もそこは気になりました。事情がありそうですね」
相原は訊いた。この手のイベントでレムリアに“惚れて”しまい、終始じっと彼女を見ている子は男女問わずいるが、ヘンな発明博士に興味ありげというのは初の事象。
すると布袋所長氏は、空になった湯飲みをテーブルに置き、
「ウチは基本的に経済事情で子育てが困難、という親御さんから預かっているんですが……」
曰く、彼女の両親は乳飲み子であった彼女を預けたが、後に家ごと焼身自殺…心中したのだという。
「中には盆暮れだけ親御さんの元で過ごせる子もいます。しかし彼女には、帰る家もないし、思い出す両親の顔もない」
聞いて“博士と助手”は顔を見合わせた。集団の中にあって、絶対にどうにもならない“違い”を自覚するほど、辛いことはないだろう。
(つづく)
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