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声は糧、あるときは武器【後】

 思わぬ人だかりに進退窮まったと見える。奥からは制服姿の警備員。その万引きか。
 男の粗暴に聴衆が距離を取る。
 その刹那、男は目星付けるように見回したかと思うと、あっという間にショップに入って女の子を引き寄せナイフをかざした。
 人質。
 警備員が警棒を手に「離せ」。
「うるせぇ!黙れ!このガキぶっ殺すぞ……そこ電話するんじゃねえ」
 すると。
「おやんなさい。できるもんなら」
 それこそシルバーの決めゼリフを口にしたのは歌手さん。いや、幾ら何でも。
 オレは後ろ手にキャラクターのデザインされた水筒を手にする。無論、武器。
「何だテメェ!」
「だまらっしゃい!男のクズのくせに。ホラ、私が代わってやるからその子を放しなさい」
「何だと?」
 歌手さんは持っていたハンドバッグをオレに預けると両腕を広げた。
「丸腰です」
「……おめえ何とかいう歌手じゃねえか」
「ええその何とかです。煮るなり焼くなり好きになさい。その代わりその子を放せ」
「いいだろう」
 男は女の子を突き飛ばし、歌手さんの手を引っ張って引き寄せた。
 その瞬間。
「フォーメーション・スーパーソニック!」
 歌手さんが通る声で言い、
 オレと店員さんは何が起こるか察知し、
 女の子は耳を塞いだ。
「~~~~~~!!」
 耳をつんざく大音声。
 オペレーション・スーパーソニック……それはシルバーが超音波発振器で敵を攻撃するときの決めゼリフ。
 果たして、身体全体を共鳴装置にした歌手さんのソプラノヴォイスはワイングラス位割れるのではというような文字通り音響兵器。……ちなみに、超指向性音響兵器は捕鯨船の妨害対策で実際使われている。
 耳の直近で喰らった犯人は言うに及ばず。
 気絶してひっくり返る。
 泡吹いて目を回したところでゴールドの水筒振り回す用無し。歌手さんが女の子を抱き寄せ、オレが犯人にのしかかって柔道の寝技“袈裟固め”警備員さんが割って入ってご用。
「さすがというかお見事」
 犯人が拘束されたところでオレは歌手さんに言った。
「油断するかなと思って『こういう場合はアマチャンが正しい』と申しますでしょ」
 
声は糧、あるときは武器/終
 
(Tribute for Yuka Uchiyae & Precure All Stars)

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