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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-001-

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 コタツに入っている丸まった背中。
 ノートパソコンを叩いていたはんてん姿の男は、誰かに聞かせるような大きな声でため息をつくと、そのまま身体を仰向けに倒し、ホットカーペットの上に腕を投げだし、バンザイの形になった。勢いでメガネの位置がズレ、指先で戻す。
 コタツの天板には、パソコン以外に学術書が幾つか積まれてあり、それだけ見れば学生のレポート作成作業のようである。書物は主としてロケット推進技術、宇宙航法、核物理。
「はぁ」
 声だけ聞けば展開に煮詰まって悩んでいるように感じる。携帯電話を取りだし、折りたたみの画面を開き、待ち受け画面をボーッと眺める。黒い瞳でショートカットの娘が写っている。
 電話を畳んでコタツの上へ投げ出す。その一方でテレビリモコンを手にし、テレビに向かってボタン押下。
 映し出されたテレビ画面は相撲中継。十一月場所という奴だ。日が落ちるのが早くなっており、窓の外は既に夕紅。冬を予感させる庭の枯れ木が悲しげな印象。
「相撲だったか」
 はんてんの男、相原学(あいはらまなぶ)はひとりごち、テレビリモコンを再び操作しようとし、目を見開いて身を起こした。
 唐突に画面が切り替わる。神妙な面もちでニュース原稿を整理するアナウンサー。
 重大なニュースが入ったのである。臨時の放送を知らせるチャイム音が聞こえ、ニュース速報の文字。
『ここで東京のスタジオより国民の皆様に重大なお知らせを申し上げます』
 ただ事で無いことは説明の要も無い。
「東海地震か?」
 相原はノートパソコンで検索サイトの画面を開き、少しキーを叩き、すぐに手を止めて再度テレビへ。
『合衆国防空宇宙司令部の発表によると、同司令部の警戒システムに何者かがインターネット経由で不正アクセス、これに伴い自動報復システムが誤作動し、核ミサイル、無人航空機等、合計25発が誤射されたとのことです。繰り返します。合衆国の核ミサイル、核爆弾搭載の無人航空機が誤射されました。大統領演説をお聞き下さい』
 
(つづく)

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