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【魔法少女レムリアシリーズ】博士と助手(但し魔法使い)と-05-

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 相原のこのセリフは物凄い嘘である。
 ドアノックの要領で、コンコンと茶褐色の“壁”の一部を叩く。すると叩かれた部分の壁が1段奥へ引っ込み、右方へスライドする。所謂プラグドアである。同時に、ドア下部より板がスルスルと手前に出てきて、草の上にスロープを形成する。
 ドアの向こうに白い照明が灯された。
「中へどうぞ。ああ、この見えている“草むら”は、研究所の向こう側の光景を映し出しているだけ。地下室でも緑の風景をってね。実験中なんだ」
 相原はまた嘘を言うと、先んじてスロープを上がり、中へ入った。
 それこそ童話ファンタジーの“研究所”を地で行く様相のためか、そのちゃんは、あんぐりと口を開いてその場を動けない。
「私たちの研究所へようこそ」
 レムリアは彼女の手を取り誘う。
 “アルゴ研究所”はスロープから中へ入ると、まずは左右両方向へと伸びる通路である。二人並んで歩けるほどの幅はなく、断面は縦に長い6角形。発光パネルで構成された通路であり、左右とも“樽面”に沿う形で、緩やかに湾曲している。言うなればSFに出てくる宇宙戦艦の通路の趣。
「こっち」
 レムリアはそのちゃんを伴い、通路を右方へ向かう。背後でスロープが格納され、プラグドアが閉じられる。その様子を、そのちゃんが立ち止まり、振り返り、心配そうに見つめる。
「私も最初同じ風に思った」
 レムリアは言い、向き直った彼女に微笑みかけ、通路を進んだ。
「なんか本当にお話の中でも入ったみたい」
 そのちゃんは見回しながら通路を歩いてくる。
 左手、背の高い分厚い扉。
 銀行の金庫室、そんな趣の観音開き金属扉。
 通ると、中は広い空間。
 空間の様子は、学生向きには講堂に似て、という表現が使えよう。一般向けには小規模シアターとでも書こうか。左手には湾曲し凹面を描く巨大なスクリーンがあり、しかしスクリーン前に客席はない。代わりに操作卓(コンソール)がスクリーンの曲面に沿って配されている。右手はひな壇になって後方へ高くなっており、それぞれの段にコンソールが1列ずつ。
「ここがコントロールルーム。まぁこちらへ」
 相原はそのスクリーン直下、コンソール中央の席に座して招いた。
 レムリアが促し、隣の空いてるコンソールにそのちゃんが座り、レムリアは更にその隣、小さなスクリーンを備えた彼女の指定席。
 
(つづく)

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