【魔法少女レムリアシリーズ】博士と助手(但し魔法使い)と-09-
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大人びた姿で画面静止。清楚な感じの若い女性。
「24歳のそのちゃん」
相原はパソコンデスクから言って寄越した。
「えっ!」
そのちゃんが振り返る。相原は頷き、
「の、予想図。仕組みはこう。子どもの顔と、その人が大人になった顔。どこが違うのか。たくさんの人の顔の変化をコンピュータに読み込ませた。目鼻の配置やその距離、顔の骨の形の変化。平均的にここがこれだけ違うってのを求めて、逆にそれから計算させたのがこれ」
「未来の彼女か」
レムリアが呟き、“二人の彼女”を見比べる。
「そう。それでね。更に、若い頃のお母さんそっくりに育った娘さん、ってパターンだけを抽出して、やり直しさせると」
画面の女性が切れ長の瞳のなるほど美人に変わった。
変化して現れたその“女性”。
そのちゃんは肩をびくりと震わせ、その様子を見ていたレムリアはハッとばかりに目を見開いた。
「これが、君のお母さんだ」
そのちゃんは画面に釘付けになった。
確かにその女性が母であれば、そのちゃんは“そっくりね”と言われるであろう。特に目元と頤はうり二つ。
魅入られたように、そのちゃんは身じろぎすらしない。……但し、相原の行った作業は統計学的な処理に基づく演算に過ぎず、遺伝子情報などを用いたものではない。従って確度は下がるであろうが。
“母”と見つめ合うそのちゃん。
“記憶にはない”かも知れないが、彼女が物心つく前の瞳で母を見ていたことだけは確かである。
その彼女が、今こうして、動けないような状態になっている。
白衣の二人はただ見守る。当初物言いたげだったレムリアも、今はただ、ゆっくりまばたきして待つだけ。
「頭の中がかき混ぜられるような気持ち」
かなり経って後、そのちゃんは呟いた。
相原はキーボードを再度叩いた。画面の“母”が、レムリアのコンソールからプリントアウトされて出てきた。
まるで結婚式場のスナップ写真。
(つづく)
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