【魔法少女レムリアシリーズ】博士と助手(但し魔法使い)と-10-
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「……本物みたい」
レムリアは見て呟き、そのちゃんに手渡した。
「私のお母さん……」
そのちゃんは写真に向かって呟いた。
その声音の故であろう、レムリアが即立ち上がり、彼女に寄り添う。
対して、
「ひとつ明らかなのは、君の身体の中にある“ミトコンドリア”。これは君のお母さんのもの、そっくりそのままということ」
相原は素知らぬ顔で、そして偉そうに言って、頭の後ろで両腕を組んだ。
「ああ、そうだね。ミトコンドリアは母の物のみが受け継がれる」
レムリアは表情を変え、明るい声で補足し、そのちゃんの手を取った。
「この中にも」
手のひらを指差す。ミトコンドリア。顕微鏡では細胞中の泡のように見える部分で、養分生成に参画している。すなわち“細胞の一部”であるが、太古は独立した単細胞生物だったようで、自分自身専用の遺伝子を持っている。
そして、ミトコンドリアの遺伝子は母方のものしか受け継がれない。
「あなたの身体のミトコンドリア。それはあなたのお母さん、そのまたお母さん、ずっと遡って人類共通の母からずっと受け継がれて来たもの。一方でこの博士が持っている細胞のミトコンドリアは、将来生まれるであろう博士の子どもには受け継がれない」
「そう。だから少なくとも、君の身体のミトコンドリアは、君のお母さんそのもの」
そのちゃんは、プリントアウトの“母”と、自分の手のひらとを見つめた。
「でね」
相原が言い、そのちゃんは目を戻す。
「その写真と、ズームアップと、照合の技術を使うと、世界中の人、一人一人の顔を取り込んで、片っ端から探すということが不可能ではない。発明ではなく、今の技術で不可能ではない」
そのちゃんの目が見開かれる。
「だけどね」
相原は画面を地球に戻した。
鮮烈なまでに青と白の星。或いはそんな模様のクリスタルガラスで出来たビー玉。
「世界の人間、今はざっと60億。女性半分で30億。片っ端から調べたとして、半分で見つかったとしよう。一人一秒かかるとして15億秒。さぁこれってどのくらいだと思う?」
「え?1週間とか……1ヶ月くらいかかっちゃう?」
レムリアがフッとため息をつき、目を閉じる。
(つづく)
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