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【魔法少女レムリアシリーズ】博士と助手(但し魔法使い)と-11-

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「47年6ヶ月」
「よ……」
 そのちゃんが絶句する。1年は3153万6千秒(1日を24時間)。10年で3億秒である。15億はその5倍。
「残念だが、君自身がママになる方が早い」
 相原は言った。
 そのちゃんは顔を伏せてしまう。
「かえって傷つけてしまったかも知れないね。でも、そこさえ何とかすれば可能なのは確かだ。そしてその何とかすることこそ発明なんだと思う。何とかしたい。それが発明の始まりなんだ。やりたいことと出来ることの間を埋める。埋める方法を探す。それには知識が必要だ。知識には多くのヒントと限界が含まれている。全然関係ないように見えて実は似ている、そんなものはないだろうか。違うように見えて見方を変えると実は一緒だったりしないだろうか。上から見てみる鏡に映してみる。原理原則だけでどこまで突き詰められるだろうか」
 相原のセリフに、レムリアの目が徐々に見開かれて行く。相原が喋っているのは、“本当の発明”。つまり物語の夢ではなく、企業の研究者が特許を書くための実際的な考え方・着眼点である。
「求め続けて、そして現実にしてきた。人類はその繰り返しでここまで来た。例えば月へ行くための主なアイディアは、19世紀にジュール・ヴェルヌが物語に書いてるよ。アメリカはそれを20世紀の技術で実際やってみただけ。そして同じく、僕が出来るのはここまで」
 相原は再びレバー類を操作する。画面が動き、彼女が住んでいる施設が映った。
「あ……」
「君を誘拐していいのは8時まで。所長さんとの約束で君を返さなくちゃならない。だからこの続きは是非君自身に。君の知りたい、生み出したいという気持ちは、僕よりずっと強いはず。その信念は徹底的に……という形に結実し、壁を越えるヒントとなり、やがて発明に繋がるだろう。発明は義務でも遊びでもない。弟子になって習う物でもない。求め続ける心のゴールさ」
 相原はコンソールのボタンを押す。背後の重い扉が開く。
「申し訳ないが約束の時間だ」
 相原に促され、少女は“母”の写真を手に“研究所”を後にする。
 うつむいてスロープを歩き、降り立つそこは施設の駐車場。煌々と照らすライトが、施設の建物を夜に浮かび上がらせる。
 白衣の二人はスロープまで送りに出た。
「期待させるようなことをして、ごめんなさいね。このバカ博士が」
 少女の背中に向かって、レムリアが申し訳なさそうに言った。
「ううん」
 
(次回・最終回)

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