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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-005-

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 相原は大柄な男の姿を認めるや、彼女から手を離し、会釈した。
「ミスター・マナブ・アイハラ」
 男は相原の名を呼び、立ち上がった。胴太で低い声の持ち主であり、ネイビーブルーの外からも内奥の偉丈夫が推測できる。身長2メートル強。この空飛ぶ船の船長、コールサインをアルフォンスス。
 彼女のレムリアという名も同様にコールサインである。言うまでも無く幻の大陸の名によるが、彼女はこれを日常的に偽名で用いる。
「色々聞いた。前回は私の代わりに酷い目にあったようで……済まなかったな」
 アルフォンススは教養を感じる折り目正しい言葉で言いながら、雛壇を降りてきた。
 レムリアは唇を噛んでうつむく。
「いえいえ。こんなひ弱な平和ボケがあなたの代わりなどおこがましいと良く判りました」
 相原は自虐的に言った。身長168である彼は、年齢22。就職戦線首尾良く終了というタイミングである。が、船長と並ぶと、さながら大人と子ども。
 相原は続けて、
「それよりも僕なんかに勝手をさせて、あなたやメンバーの誰かが本部から叱責を受けた、なんて事はありませんよね」
 彼はそう言って、レムリアの手を再び取った。
 レムリアがハッと見上げるとニタッと笑う。気にするな、言葉は無いがそうと判る。
「無論そんなことはない。知っていると思うが人事面の一切は全て私の管理下だ。でも今回はより危険なので君はあくまでブレインとして招いた。いわば講師だ。早速で済まないがどうすれば良いか検討する。作戦席に着いてくれるか?」
 船長アルフォンススはひな壇より降り立ち、天を向いた液晶テレビを示した。
 


 
 液晶テレビ(手書き認識機能付きタッチパネル)の周りにクルーが全員集合した。
 副長〝セレネ〟は女性である。シルクロードの古代王家を思わせる欧亜混交の顔立ちで、相原より若干高い痩身に白いローブを纏う。
 
(つづく)

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