アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-008-
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「燃料タンクかエンジンをオシャカにする」
「ちょっと待て」
アルフォンススが否定の意志を示した。
「確かにその通りだが、レーザで弾頭を撃ち抜いてしまったらどうする。点火はしなくても中身が漏れるぞ」
「あの……いいすか?」
懸念を示すアルフォンススに相原が発言を求めた。
「構わん、言ってみてくれ」
「船体を使ってみたらどうでしょう。光圧シールドで覆っておいて接触し、標的国の領域外まで押し出す。同じ速度で飛びながらであれば可能と思いますが」
「なるほど」
「大陸の深いところだったらどうするんだ」
言ったのはアリスタルコス。
「エンジンで吹き飛ばす。宇宙へ」
相原は即座に答えた。そして続けて。
「それでもだめな場合に初めて銃器を使う。なるべく有限の資材は使いたくない。それから、爆発力、推進力を完全に破壊する必要は無いと思います。ロケット推進へのダメージ、安定翼類の損傷などで制御を失わせ……」
「待て相原」
アルフォンススが勢いづく相原を制した。
「今ここで全てを決めてしまおうとするな。それだけ出せる発想力があればとりあえず充分だ。そう最初からガチガチに決めてしまうと、例外事象が生じた時、そうしなきゃという固定観念と化して自由な思考を阻害する」
自分の言ったことに縛られ、臨機応変な発想が出てこない。
「判りました」
相原は答えた。
レムリアは気圧されながら彼らのやりとりを聞いていた。彼らが自分をクルーの一員として遇してくれ、年齢による配慮・意識を排してくれているのは知っているが、やはり背負っている背景……人生経験や総合力を要求される場面では年齢なりの差違が出てくる。
その中で相原はどちらかというと自分寄り……子どもっぽい近しさを感じていたのだが、現時点に関する限り彼も大人の側だ。
(つづく)
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