アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-011-
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イヤホンにピンという甲高い音。アルフォンススからのコール。
『総員、作戦を開始する。アリスにラング、配置は良いか』
アルフォンススの問いがあり、続けて双子から配置についた旨言葉が返る。
『レムリア、標的国圏内に一番近い弾頭はどこだ』
アルフォンススが訊いてきた。
「はい」
レムリアはレーダ画面に目を走らせた。自分に重大な責務が課せられたのだと気付いて全身が震える。動転、までは言い過ぎだが、看護師している時の余裕や自信はない。
「北極海の……」
目に付いた輝点の座標を言いかけようとした時、相原がギュッと左手を握って来た。
痛いと思いハッと気付く。彼は自分を制したのであった。そのせいか、少し冷静さを取り戻した。
「違う、前言を訂正する。黄海。座標125E39N(いちにごいー・さんきゅうえぬ)。巡航ミサイル2機」
相原は口を挟んだ。数字は経緯度であり、Eは東経、Nは北緯を意味する。
その位置から推測される標的は〝38度線〟の北側、閉ざされた先軍・全体主義国家。
同国は“闇市場(※)”で調達した資材で開発した核ミサイルを所持しているとされる。その防空識別圏を越えれば、これを好機とばかりその核を放つであろう。その国を日本は非国家主体とみなしているが、その非国家主体を出自に持つ者は実は日本国内に多数いる。畢竟、非国家主体にこの騒動が伝わっていないわけが無い。
※パキスタンのカーン博士が資材・技術の流出先として構築。“カーン・ネットワーク”とも。2004年に発覚。
「もっと急ぐべき目標と思料します」
『了解。両舷全速、相原の座標位置に急行』
アルフォンススが指示する。
「了解。光圧シールド作動。INSオン。各員現位置から動くな」
(つづく)
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