アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-014-
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「中身は核、なんだよな」
相原の呟きが慄然とした響きを帯びる。湾岸戦争は1991年。レムリアが生まれる前。
比較に基づく彼の恐怖感はピンと来ない。だが、これ1発で万の単位殺戮できる、とは認識できる。核爆弾の恐怖はそれこそ日本のヒロシマ、ナガサキとして知っている。
電子と、機械の、白い悪魔。
イヤホンにコール。アルフォンススである。
『2機を攻撃する。不測の事態に備えベルト装着。シュレーター、高度を奴より上に取れ。速度は自動追従。INS使用』
3
アルフォンススの言葉を受け、ドクターが舵と加減速レバーを操作する。まずは巡航ミサイルの真後ろ、高度やや上に船を付ける。
『真上に移動し、海面に押しつけて沈めろ』
更に指示。ドクターが舵の左、ずらりと並ぶボタン類に手を伸ばす。
その動作に相原がハッと気が付いた顔を見せ、ドクターを制する。
「ちょっと待った。自動追従はダメだ」
レムリアは相原の意図するところをテレパシーで知った。
同時に、彼の指摘が遅すぎたことも。
画面に標的自動追従の文字が出るや、並んで飛んでいた二機の巡航ミサイルは左右に分かれ、てんでに逃走を始めた。
「しまった!」
『何をやった』
アルフォンスス。
「ミサイルがロックオン回避行動に出たようです」
相原が答えた。狙われていることにミサイルのコンピュータが気づき、逃げ始めたということだ。
ロックオン検出はこの船やクルーが装着する哨戒システムにも搭載されている。最新鋭のアビオニクス(電子頭脳)を有するミサイルが持っていて当然の装備。気づけなかった相原のミス。
『了解。直ちに追尾せよ。相原、挙動が先読みできるか。どちらかが囮(この場合、引きつけ役の意)の可能性があるが……』
(つづく)
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