アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-021-
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『放逐、INS作動、全速』
アルフォンススが言い、甲板から巡航ミサイルが宇宙めがけて放り出され、同時に船が全速力でメキシコ湾へと馳せる。きりもみして狩りに降りるハヤブサの如し。
「目標地点到達です」
レムリアは言った。
既に船は夜明けのマイアミ南方にあり、彼女は目標を血眼で探し始める。この船は地球の真裏に到達するまで7秒足らず。いつもはテレポーテーション(瞬間移動)の感覚で楽しむが、今日はその速度こそ頼り、そして一縷の望み、心強さ。
「見つからない」
レムリアは乾いた声で言った。焦りの気持ちが手のひらに汗をかかせ、トラックボールの手指が滑る。
「焦ると、見つかるものも見落とすぜ」
相原に言われる。
だがどうしろと。レムリアはそれこそ兄に文句を付ける妹のように彼を見た。
「大丈夫。見つかる。目を閉じて深呼吸」
相原は気楽に言ってくれた。その手をレムリアの肩に手を乗せ「ゆっくりと息をしろ」。
そして。
「ハイOK。目を開けてもういっぺんゆっくり見てみな」
レムリアは頷いた。視界が歪み、自分が涙を浮かべていると判る。看護師なりに緊急即応能力はあるのかと自負していたが、思い上がりだと痛感する。否、どこかしら誰かに甘えているのかも。
「位置は間違ってないと思うが」
相原がヘッドホンをかぶって腕組み。“魔法レーダ”を彼なりに行使中。
ある、けど、見えない。
ステルス?それとももっと単純に。
「小さい、のかな」
レムリアは呟き、画面の縮尺をどんどん拡大した。人間どんなに追いつめられても、冷静になりさえすれば、いろんなことを考え出し、新しい発見をする余裕が生まれる。
相原が顔をしかめた。魔法レーダが何か拾った。
「空電だ。セルか何かありますか?」
(つづく)
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