« アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-021- | トップページ | アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-023- »

アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-022-

←前へ次へ→
 
 相原はセレネの方を振り仰いで訊いた。セル(cell)とは積乱雲の集合体。低気圧までは行かないが強い上昇気流を伴い、豪雨、降雹、時に竜巻を伴う。
「お待ち下さい」
 セレネが自席のパソコンをカチャカチャ。
「この空域にはハリケーンがあります。カテゴリー2。示度(しど:中心気圧の意味)970。風速100マイル毎時」
「了解」
 インターネットの気象サイトを見つめるセレネに相原が頷き、舌打ち。
「ゴーストが出るなぁ」
 ゴーストは虚像の意。すなわち、電波を利用する通常のレーダはうまく働かない。
 レムリアはそれを聞き、彼と、自分のレーダ画面を見つめて悩んだ。
「学……さん。じゃない、船長代行」
 相原が自分を見る。その真剣な眼差し。
「どうした」
「予想位置の半径80キロは探した。でも見つからない。どうしようか、って」
「じゃあもっと範囲広げて」
「いいけど電波じゃ狂っちゃうんでしょ?」
「そうな。電波じゃくる……電波か」
 レムリアのセリフに相原は考え込み、そしてカッと目を見開いて指を鳴らした。
「赤外線を使う。幾ら台風でもエンジンほど高温じゃない。最低感度800ケルビンくらいにして探査を」
「了解」
 船長からのピンも得て、レムリアは言われた通り赤外線レーダに切り替えた。800ケルビン、セ氏およそ530度以上の物体にだけ反応するようにする。
 画面の様子が変わり、左側、即ち南の方向に小さな反応が一つ現れた。
「これかな……え?時速650キロ?」
 巡航ミサイルには速い。通常のミサイル・ロケットにしては遅い。
「考える前に行って確認」
「了解。船長レムリアです。エコーありますが目標とは確認できません。接近し、視認したいと思います。許可願います」
 
(つづく)

|

« アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-021- | トップページ | アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-023- »

小説」カテゴリの記事

小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-022-:

« アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-021- | トップページ | アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-023- »