アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-022-
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相原はセレネの方を振り仰いで訊いた。セル(cell)とは積乱雲の集合体。低気圧までは行かないが強い上昇気流を伴い、豪雨、降雹、時に竜巻を伴う。
「お待ち下さい」
セレネが自席のパソコンをカチャカチャ。
「この空域にはハリケーンがあります。カテゴリー2。示度(しど:中心気圧の意味)970。風速100マイル毎時」
「了解」
インターネットの気象サイトを見つめるセレネに相原が頷き、舌打ち。
「ゴーストが出るなぁ」
ゴーストは虚像の意。すなわち、電波を利用する通常のレーダはうまく働かない。
レムリアはそれを聞き、彼と、自分のレーダ画面を見つめて悩んだ。
「学……さん。じゃない、船長代行」
相原が自分を見る。その真剣な眼差し。
「どうした」
「予想位置の半径80キロは探した。でも見つからない。どうしようか、って」
「じゃあもっと範囲広げて」
「いいけど電波じゃ狂っちゃうんでしょ?」
「そうな。電波じゃくる……電波か」
レムリアのセリフに相原は考え込み、そしてカッと目を見開いて指を鳴らした。
「赤外線を使う。幾ら台風でもエンジンほど高温じゃない。最低感度800ケルビンくらいにして探査を」
「了解」
船長からのピンも得て、レムリアは言われた通り赤外線レーダに切り替えた。800ケルビン、セ氏およそ530度以上の物体にだけ反応するようにする。
画面の様子が変わり、左側、即ち南の方向に小さな反応が一つ現れた。
「これかな……え?時速650キロ?」
巡航ミサイルには速い。通常のミサイル・ロケットにしては遅い。
「考える前に行って確認」
「了解。船長レムリアです。エコーありますが目標とは確認できません。接近し、視認したいと思います。許可願います」
(つづく)
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