アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-024-
その時再び稲妻が走る。もう一本、さらに一本。間断無く立て続けに5本走る。
うち一本が船からのレーザに沿って飛び、怪鳥を撃った。
「誘雷(ゆうらい)された!」
「アビオニクス誤動(ごどう)。総員警戒!」
相原とアルフォンスス、即ち電子魔法を持った二人が同時に声を上げた。
高圧電流で怪鳥の制御が狂ったのである。ちなみに、レーザ光は高熱で空気中の物質を電離する。すなわち電流の通り道を作る。用いて落雷を特定の領域に導こうとする技術がある。その落雷誘導と同じ仕組みで航空機に落ちたのだ。
電撃の高熱で煙を上げる翼の下から何かがバラ撒かれた。
撒かれたそれらが次々にロケットモータを噴射し、てんでんバラバラの方向へ飛んで行く。
小型ミサイル。メインの大量殺人用核爆弾ではない。
『弾幕!』
アルフォンススの声があり、アルゴ甲板から多数のアルミの塊と火の玉が発射された。
怪鳥B2自体にそれらは簡単に命中した。エンジンが炎を噴き、バランスを崩し、ひらひらと舞うように嵐の中へ姿を消して行く。これでとりあえず幾万人かの命は救われた。
しかしばらまかれた小型ミサイル群には当たらなかった。
標的が小さすぎるのである。人の背丈ほどの代物を、しかも彼我ともに動いているのに、何十メートルも離れて狙うのは至難の業だ。
「あの……一体何が……」
セレネが半分唖然とした顔で訊いた。
応じてレムリアは相原を仰ぎ見た。技術的に面倒な事態が複数一気に発生したのだということは判る。予備知識がないと何がどうしたのか全然判らない。
「電撃で飛行機のコンピュータが狂った」
相原はまず言った。
「コンピュータは自分のいる位置、座標を勘違いし、予定とは違う場所で積載物を投下した」
(つづく)
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