アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-028-
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『やったぞ』
アリスタルコスが歓声。ミサイルはさながら首から上をちぎり取られた状態。失調し、ロケットモータが炎を失い、水爆を封じた金属の棺桶となって嵐のメキシコ湾に舞い落ちて行く。
『処置完了、次へ行く』
「了解」
レムリアはすかさず標的をポイントし、応じて船は大きく左方へ進路を振った。
比較的低空をかなり遅い速度で飛ぶ一発。船が近づく。
『相原どう思う』
相原はまばたきし、小さな笑み。
「デコイです」
声ににじむ安堵。デコイとは“おとり”のこと。すなわち電子回路は持っているが、敵のレーダにわざと発見され、攻撃力を引きつけるのが仕事。レーダ電波の発信源を追いかける制御はしていない。当然爆弾も積んでいない。
『……よろしい確認した。次だ』
アルフォンススの了解を得、船は返す刀で北方へ飛ぶ。嵐の領域をくぐり抜け、珊瑚礁浮かぶ熱帯の青い海。
標的は、いた。
本物。
先ほどと同じように、船から電波を放出しながら、ミサイルの前に出る。
ミサイルが船の電波に反応して追いかけてくる。
ただし今度は先ほどと条件が違う。気流が安定しているし豪雨もない。
制御システムと電子戦をやる必要もないようだ。点火距離に到達する前にラングレヌスがアルミの弾で先頭部を潰してしまう。
するとそいつは爆発、恐らく自爆した。
空中に生じた火炎の中から、銀色の、大きな、それこそ缶詰のような代物が、カリブの青い海に落下して行く。
『あれが、あれだよ』
アルフォンススがゆっくり言った。つまり水爆本体“核の缶詰”である。平和な青い海を漂うにはあまりにも不釣り合いな巨大缶詰。
「回収はしなくて良いのですか?」
セレネが訊いた。
『しない。そんなヒマはない。追って合衆国へ座標を流しておく。次だ』
(つづく)
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