アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-029-
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「あの」
そこでレムリアは一つの動きに気が付き、言った。
『どうした?』
「か、関係ないことかも知れませんけど」
返ってきた声の勢いに思わず首をすくめる。今のアルフォンススには事態を、いや、地球の運命を背負った重圧からか、余計な発言を許してくれそうにない雰囲気がある。“関係ないなら言うな”と、どやしつけられてもおかしくない程。
しかし、それは彼女の杞憂であった。
『構わない。言ってくれ。要不要は私が決める』
アルフォンススは許可した。声も抑制した感じだ。
レムリアは安堵の息をついて、報告した。
「はい。先ほどのおとりミサイルですが、南米大陸の軍が感知したらしく、航空機の編隊がその海域に向かっています」
喋る途中から相原が動き、レーダスクリーンをいじる。先ほどデコイと遭遇したあたりを拡大。
アルフォンススから回答があるまで数秒。
『いやレムリア、それは重大な情報だ。連中を中心に周辺の状況をレーダで探れ』
指示されたが、その実行結果は相原が既に表示している。
ただ、その場に生じた緊急事態はレムリアが先に気付いた。
「航空機編隊に向かって四方から小型ミサイルが高速で接近中。数20。軌跡の解析より先ほど誤射された他のミサイルと確認。我々が落とせず残っていたミサイルの全弾になります」
レムリアは息を呑んだ。おとり、罠に嵌める……電気機械仕掛けでここまで見事に(適切な表現かどうかは別にして)可能なものか。
そして。
『舵手、現地急行せよ。副長、本部を経由し、我々が接近する旨通知せよ。攻撃を加えないよう政府筋を通じて依頼を回せ』
「判りました……えっ?」
セレネが反射的に答え、問い返した。それは、この船が目撃されることを予見しての措置である。このホーミングミサイルに関しては、銃撃処置する関係上、撃つ時に光学シールドを全て切るので姿を見られる。
(つづく)
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