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【理絵子の夜話】犬神の郷-7-

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「おお、これはこれは大ばば様」
「突然お邪魔をいたしまして。ご在宅とは知らず」
 老女の姿に紳士らは居住まいを正した。
 それは、母君の動向、すなわち入院を大枠で把握していたことを示した。
「おめさんら、どこから来なすったね」
「山越えまして……」
「したが病院だなや」
 その理絵子らが関わった伝承は“心霊スポット”としてインターネットを媒介に喧伝されており、母君が入院した際、住所を知った看護師に訊かれて、面白半分なら、と面白半分に話したのだという。
「あんたらまで来なするとはね」
「ではウソ……」
 紳士らは一様に驚きを示したが。
「ウソではねぇよ。したが犬神様の呼び立てが来るとは思わなんだでよ」
「探るような真似をして申しわげねぇ」
「秘密にしねがなんねがよ(しなければならないのでしょう?)。仕方あんべ」
 母君は小さく笑みを見せた。犬神の儀式は実行するかどうかも含めて極秘であり、大っぴらに巫女の候補を探すことは出来ない。それは承知している。だからこっそり情報収集も仕方ない。理解しているから気にするな。
「んで、理絵子様のことを知りなすったと」
「はぁ、そんだず。したが、あの、大ばば様は犬神をご存じで……」
「詳しくは知らねえよ。ただわらし(私)も来いら言われたことあっがよ。選ばれなんだけども」
 それをきっかけに地域の……現在の表現を使えばスピリチュアルな物事に関わるようになった、と母君は言った。
 しかもむしろやってくれと拝み倒されたという。犬神の巫女候補と言うだけで特別扱いなのだ。ちなみに、その時の装束に理絵子が袖を通した。
「概略は把握しました」
 一連のやりとりを聞いていた本橋美砂が言った。
「1時間ほどお待ちいただけますか?」
 
(つづく)

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