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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-035-

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 程なくカメラの視野をはみ出し、全体が鏡のように宇宙の漆黒と星のきらめきを映す。
「適応化制御および展帆完了。船内重力0.996G」
 ドクターが喚呼する。これで、船はその向きを変えることにより、セイルが生み出す加速、すなわち地球から離れて行こうとする遠心力と、地球重力との釣り合いを取った。ニュートン力学的に均衡……ニュートン均衡である。
 正面スクリーンに動力システムの変更を示す文字が出る。主機関はアイドリング(即応待機)となり、3枚の帆が開いた旨のCGと、各セイルの受光エネルギ数値(単位メガジュール。太陽電池としての発電量から換算)が現れる。ちなみにカメラ画像でなくCGなのは撮れないから。幾ら広角に引っ張っても帆の全容を捉えることは出来ない。薄く広がった結果、その面積はサッカーコートほどもあるからだ。それを3枚使い、恒星からの粒子ビームを受け止める。その姿は船の帆というよりは、巨大な凧に船体がぶら下がっていると言った方が正しい。
 星が作り出す光や放射線だけで質量がトン単位の船を進めるには、これくらいの大きさが必要なのだ。
「現在セイルにより航行中」
 ドクターは続けて喚呼した。エンジンは要するに巨大コイル……すなわちエレクトロニクス、電動であって、アイドリングは無音状態。
「目標補足。船速500。目標まで120キロ」
 レーダが注意喚起の音を立て、応じてレムリアは言った。
 静かな操舵室。
 スクリーンには、青と白の清浄な光景と、それを包むシャボン玉のような薄膜……地球大気と、その薄膜の彼方で輝き揺れる青緑の燐光……オーロラ。オーロラを宇宙から見たのは初めてだが、極地をリング状に囲んでおり、まるで音無く燃える魔法物質の炎環(ファイヤーサークル)のようだ。
 
(つづく)

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