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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-040-

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 今は違うであろう。実用に供されているレーザ兵器はこの船を筆頭に幾つか出くわした。
「まぁどうでもいい。迷っているヒマは無い。シュレーター、エンジンで子弾頭を吹き飛ばす。方向そのままで船体前後反転」
 アルフォンススが指示する。
「了解」
 シュレーターが応じて舵に手をする。船はくるりと前後を入れ替えて宇宙を滑る。フィギュアスケートの後進状態に似て。
 すると相原。
「レーザは一発こっきりと思うな。弾頭が割れただけだと判れば、とどめを刺しに来る」
「了解です」
 彼の注意にレムリアはテレビカメラを動かし、視野に一帯を捉え、画面のコントラストを調整した。
「今の発砲を自動回避対象に登録せよ」
 アルフォンススの指示。再びレーザ光線を探知するようであれば、自動的に回避するように船に設定せよ。
 すなわち光が来るのを見たら逃げろ。光速を考えると一見無謀だが、この船はマイクロ秒ですら有効な時間に使える。
「りょうか……」
 レムリアは、答える前に、一瞬早くそれと気付いた。
 船のシステムでは無い。殺気に対するテレパシー。
「離脱下さい!」
「INS!全速!ついでに吹き飛ばせ!」
 アルフォンススが即座に命を発し、ほんの一瞬だけ、エンジンが出力全開になる。
 船は逆進状態であり、その後方から光の柱が放射され、船が前進状態に転じ、同時に地上から射られた赤い光条が到達し、双方交錯する。
 すなわちエンジン全開だからこそ命中を免れたと言えた。文字通りマイクロ秒の結果である。そして同時に、アルゴ号がミサイルと判断されて撃たれ、比してあり得ない挙動で回避したことを意味した。
 それが何らかの形で非・自由主義諸国に反応を惹起することは間違いないだろう。要するにミサイルでは無い、未知の“何か”が宇宙空間にいることが露見したのだ。
 
(つづく)

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