アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-042-
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宇宙から次第にズームアップして行くスタイルで空撮が投影される。
「バイカル湖」
「その通り」
相原とアルフォンススのやりとり。バイカル湖は三日月形で、しかし日本の本州に迫るサイズ。その形と大きさはすぐ見て判る特徴。
ズームアップは湖を西方に外れ、赤い“+”と共に整然たる都市区画を表示した。
周囲には他の街や道は見えない。独裁国家の人工都市のように、荒野に忽然と存在している印象。
「イルクーツク26だ。ソ連時代の秘密都市だよ」
「は?」
アルフォンススの言葉に相原が目を剥く。
「ミサイル基地か何か……」
「いや、もっと厄介だ」
アルフォンススは腕組みする。秘密都市、それは旧ソ連において、主として兵器の研究開発を行っていた地図に載らない非公開都市のことである。無論西側……自由主義諸国との冷戦・軍拡競争の中で生まれたものだ。
ソ連崩壊で存在が明るみになり、更に衛星撮影技術の発達によって、シラを切ることも無くなった。
「厄介……核ですか」
相原がアルフォンススに訊いた。
アルフォンススはまっすぐに相原を見返した。
「我々の知る限り、そこは乾電池と同じような概念の、“手のひらサイズ原子炉”を開発していたようだ。ところがプラントが事故を起こして閉鎖された。同時に起きた原発事故の方しか報道されなかったがね。それ以降は核廃棄物の貯蔵場所。核のゴミ捨て場だ」
「じゃあ」
「そうだ。遮蔽なんかされていない。世界に見えないことを幸いに、ウランやらプルトニウムやらが何トンという単位でドラム缶に放り込まれたままゴロゴロしている」
そこに核爆弾が雨のように降る。
「日本に投下された原爆の核物質が1キログラムだぜ」
相原はレムリアに向けて言った。
(つづく)
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