アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-044-
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「後の2つはスキャンの方法が違う。実弾と断じて良い。対処する。シュレーター速度を合わせよ。弾頭の右横に並べ」
「了解」
要は追従制御なのだが、レーダの類では失敗の可能性があるのは巡航ミサイルの時と同じ。そこで、船のカメラが捉えた画像を頼りに、各カメラの特定の位置に弾頭の画像が来るような制御を行う。
船が弾頭の横に並んだ。
「甲板に載せろ。宇宙へ放逐する。いいか、こいつらは海陸問わず下に落とすな。落とすと潰れる」
「了解」
船が弾頭をすくい上げる。甲板に黒焦げ核弾頭を載せ、そのまま一気に宇宙へ。船外の画像がシーンチェンジのように真っ暗になる。
レムリアは最大限の注意でモニタを監視。
「放り出せ!エンジン噴射」
アルフォンススは言い、自ら操舵権を執ると、弾頭を一旦宇宙空間に投げ出した後、船の向きを変え、エンジンの光子噴射で宇宙の果てへと放逐した。
秒速20キロまで加速し、太陽系の惑星が回る軌道面とは垂直に撃ち出す。これで絶対に地球に戻ってこない。
「次!」
「舵は私が」
シュレーターに操舵権が戻り、再び一気に大気を通過。もう一発の横に並ぶ。
「もう一度同じく」
「了解」
アルフォンススが指示し、リピート作業。宇宙へ行き、弾頭を放り出し、大気圏内に戻る。
これで、残りは所定軌道をまともに落下中のMARV親弾頭1発。
「対流圏へ出てきます」
レムリアは言った。対流圏とは大気のうち、雲ができる領域のこと。
レーダに感あり。ズラリと並ぶ輝点。次第に相互離れつつ並び落ちて行く。
「来ます。すでに分裂済みです。子弾頭の数30」
その場の全員が固唾を呑む。
「相原」
「ええ」
相原が寄越した魔法の力の二人の認識。
「総員……デコイなしの全弾核だ」
アルフォンススのその声はまるで宣戦布告に聞こえた。
(つづく)
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