アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-046-
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「やってみよう。シュレーター。第1セイルのみ展帆。展開度10パーセント」
「了解。第1マストセイル展開、展開度10」
「光圧シールド保持せよ。機関全速!」
アルフォンススが言った。その直後。
ブザー音と共に正面スクリーンに警報。“燃料僅少”。
「えっ!?」
「あと幾らだ。正確な残量を寄越せ」
そのとんでもない警報にアルフォンススは機関担当、ラングレヌスに目を向けた。
ラングレヌスがコンソールを覗き込む。
「フルスピード航行を続けるなら5分だな」
「なんで……」
レムリアは思わず、誰にとも無く文句。
「元々これが予定外だからだ。知っての通りこの船は陽電子の生産能力の関係で月に一回しか飛べない」
つまり前回の活動の後、補充された燃料……陽電子の量が不充分だったのだ。
「5分か…」
アルフォンススが少し考える。
一同は彼を見た。シュレーターはすぐ行動できるようにだろう、舵に手を添える。
レムリアは思う。それがために核ミサイルを放置するわけには行かぬ。
「僕なら行く。カミカゼと言うなら言え」
相原が先に決意を声にした。カミカゼは言わずと知れた神風特別攻撃隊のことだ。アルフォンススは彼を見、一同を見回し、レムリアと目を合わせ、ドクターを見た。
「行け。燃料が無くなってもかまわん、全部引っかけろ」
「了解!」
待ってましたとばかりにドクターが答えてレバーを押し込む。出力がフルパワーとなり、レーダ上の輝点へ向かって船が突進する。
最初の1発目。
「高度8000」
レムリアは言った。男達は弾頭と船の状態とにそれぞれ意識を集中している。ならば周辺情報を自分が提供するまで。
「速度を落とせ」
アルフォンススが指示し、ドクターが加減速レバーを手前に引く。高速でセイルを弾頭にぶつけると潰す危険があるので、一旦速度をゆるめ、網で魚をすくうように、通過しざまにセイルに引っかける。
(つづく)
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