アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-048-
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僅かではあったが、接触ポイントがずれ、弾頭は帆に弾かれたようになって、落下経路を変えた。
次第に低く、遠くなる。
「失敗した!」
ドクターが舌打ちした。スクリーンに映る弾頭が遠くなって行く。
「追え!」
アルフォンスス。
「INSが使えない。加速力が不足だ。無茶すると弾頭共がどうなるか」
ドクターが舵に手をして訊く。INSは操舵室を回転させるものであり、船外の物体には作用しない。
すなわち核爆弾を捨てないと船本来の性能が使えないのだ……レムリアは気付いた。
しかしどこへ捨てる?核物質イコール捨てるべきでは無いもの。
でも、それでは思考が止まってしまう。
逆転の発想が今こそ必要なのだと気付く。
逆。
「核爆弾を捨てられるところ……」
無意識に呟いたと気付いた刹那。
「それだレムリア!シュレーター、セイルを切れ!切り離せ!」
アルフォンススはその場で立ち上がって指示した。包丁を捌く仕草に似て、手のひらで手刀を切る。
「切ってエンジンで宇宙へ飛ばせ!セイルごと捨てろ!」
「了解!」
シュレーターが即座に応じた。
僅かに口元に笑みを刻んで。
成否を論ずる段階では最早無かった。
出来るだけのことを、出来るだけ。
セイルが切り離された。
ロックが外れ、折りたたまれた帆が開き、爆弾を盛られた皿の如くとなり、自由落下を開始する。なお、マストから切り離されると開くのは飛行中の事故対策。開くことで滑空し、地上への激突を防止する。
「下へ回り込め、エンジン全開!」
アルフォンススが言う。船が加速してその皿の下方に回り込み、エンジンから真っ白な光を吹き付ける。
凄まじい加速力が爆弾の皿に印加される。その力に爆弾がひしゃげ、内容物が飛び出した。
ので、あろうが。
(つづく)
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