アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-050-
←前へ・次へ→
「第2マストセイル展開」
切り落とした船首寄りのセイルに代わり、船体中央のマスト、最も大きなセイルを使う。
セイルを開く。
網が広がり速度が落ちる。空気抵抗である。
船が揺らぐ。INSが働き、そして停止。
弾頭に近づいた。
画面に警報。
「点火回路作動!」
すなわち、原爆が爆発動作へ。
レムリアは、目の前の画面で、船のコンピュータが、アニメーションを表示するのを見た。
残2秒。
間に合わない……。
同じ画面を相原も見ていると知った。
ただ、彼は諦めていなかった。
ヘッドセットを装着し、操舵権を確保。
「なにっ?」
シュレーターが自分達を見た。
相原の脳波思考と船のコンピュータが連携し、連動制御が掛かり、弾頭の下に船が回り込んだ。
帆を広げ、針路行く先に立ちふさがる。
「相原無茶だ!」
アルフォンススが叫んだ。
耳孔のイヤホンマイクに手をしたのは、相原の操舵権を解除しようとしたのかも知れぬ。
しかし、相原は船長権限で御していた。
船が突っ込んだ。
セイルが、弾頭と正面衝突した。
弾頭がひしゃげる。セイルがゴム膜のように広がってそれを包み、
捕らえる。
残1秒。
-バック転だ!
「踊れアルゴ!」
相原が、叫んだ。
船がセイルを切り離した。
0.8秒。
そして同時に、船はその場でくるりと宙返りした。
切り離したセイルに、一瞬で船尾を向ける。
それは、サッカーの同様なシュート動作を思わせた。中空のボールを宙返りしながら蹴る奴だ。オーバーヘッドキック。
0.5秒。
エンジン全開。
この時船首は地上を向いており、船尾カメラはエンジンの光束で一面の白銀に包まれた。
従い、実際に何が起こったのか、すなわち、水爆が作動したかどうかは判らぬ。
1つ確かなのは、船から一筋の光条が宇宙へ向かって打ち上げられたように見えた、ということ。
宗教画で聖なる降臨は天から光が差してくる。スポットライトのように描かれる。
比して逆。地上から遙か宇宙へ光が突き上がった。
船が動き出したと感じた時、レムリアは自分が別の世界に生まれ変わったような気がした。
そう確かに、船はエンジン全開なりの推力で地上へ向けて突進した。
そして、世界一深い湖、バイカルに頭から突っ込んだ。
派手な噴水のように、水柱が高々と、キロメートルのオーダで上がった。
(つづく)
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -11-(2023.01.25)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -10-(2023.01.11)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -09-(2022.12.28)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -08-(2022.12.14)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -07-(2022.11.30)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -11-(2023.01.25)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -10-(2023.01.11)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -09-(2022.12.28)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -08-(2022.12.14)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -07-(2022.11.30)
コメント