アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-054-
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多国籍軍。湾岸戦争(1991年)は生まれる前だが、豊富な動画で見知っている。そこで構成された合衆国主導の自由主義諸国合同軍だ。圧倒的な火力でイラクをクウェートから追い散らした。巡航ミサイルという代物が初めて本格的に実戦使用された戦役である。相原が言うには「飯食いながら戦争の生中継を見るとは思わなかった」。
それが、今度は、自分達を、狙っている?
何故。
「私たち、核ミサイル全部落として、その騒ぎを起こした犯人として狙われているということですか?放火した消防士だって」
状況を整理するとそうなる。
画面に文字。今度はコルキスの本部からメール。
「本部です。私達は狙われています。すぐにその場を離れよ」
「火を消した、とすら見られて無いかもな」
レムリアのたとえを受け、皮肉っぽくアルフォンススが言った。
セレネがメール本文を表示する。
『多国籍軍は今回のミサイル誤射の首謀者、核テロリストとして、カリブ海で目撃された“幽霊船”の発見破壊を命令した。これは多国籍軍の指揮を執る合衆国の主張によるもので、彼らは根拠として一ヶ月前にT島の医療施設を破壊した“幽霊船”を挙げている。我々はかかる事態に政府筋を通じて多国籍軍側に状況説明を行い、T島事件の実態と共に国連経由で参加各国に働きかけを行っている最中である』
「突如全世界が敵か」
ラングレヌス。
「投降する……んですか?」
レムリアは弱気になって訊いた。根本(こんぽん)、こちらがホールドアップする理由はない。だからといって投降するのはおっしゃる通りという意思表示。しかもその場合、相手が問題になる。何せ今は“多国籍軍”の一角ではあるが、普段は核ミサイルで合衆国と対峙している側だ。
そんな国に身を、この船を委ねる。或いは刃向かう。
(つづく)
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