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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-056-

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「沿岸、露軍戦車隊を検出」
 レムリアは報告した。
「撃たれるか」
「いえ……再び電文です。湖上の帆船に告ぐ。貴君らは今回のミサイル誤射事件の容疑者として、国連の名において組織された多国籍軍の命により、我が軍が身柄を拘束する。身柄と不服申し立てにおいては国際法に則り処理する。ただちに投降せよ。諸君らの能力は把握されている。無駄な抵抗を避けよ。意思表示無き場合……」
「罠だ!INS!」
 アルフォンススが突如言い、自コンソールでボタンを押した。
 船が駆け出すのと、天から光の矢が降ってくるのは同時であった。
 ただ、ただ僅かに数瞬だけ、船がそこを離れる方が早かった。
 バイカルに光の柱が立て続けに突き刺さる。
 グリーンの光条であり、まるで電信柱の如き太さである。雲上に神が居て、めがけて投げたというのが自然なほど。そして光条に射られた水面は爆発的に反応し、白煙を上げる。高熱による蒸発であろうか。
「MTLか?」
 ラングレヌスが問う。船はバイカルの湖面を右に左に身をひねって飛ぶ。その航跡を僅かに遅れて光条が突き刺して行く。
「そうだ」
「早すぎる」
 常識で考えてアルゴ号の挙動をキャッチアップできる兵器は存在しないが。
「衛星の角度をひねるだけだ」
 アルフォンススは舵を切りながら答えた。
 解説を加える。ミラートラッキングレーザ。人工衛星で生成したレーザを別の鏡衛星で反射させて遠隔地に撃ち込む。レーザのルートは同時に3本形成され、命中精度と光線強度を上げている。つまり3箇所から同時に撃たれる状況に同じ。そして宇宙空間からの照準であるので、衛星の鏡の角度を変えるだけで地上標的を追尾可能。これは、宇宙船から地球を見た時、数百・数千キロを一度に見渡せることからも想像されよう。要するに船の速力のゆえに照準システムが僅かに追いつけず、どうにか命中していない、というだけ。
 速力を落とせばアウト。
 
(つづく)

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