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【理絵子の夜話】犬神の郷-13-

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「ただ、塙さんにご挨拶だけさせていただければ」
「だども」
 躊躇う幹部らの姿を見て美砂が玄関から外へ出た。
 降りしきる雪、であるが。
 彼女の衣服や髪に白いものが付着しない。
 さりとて雪が溶けるわけでも無い。突っかけてるサンダルは確かに雪を踏みしめている。
 幹部らは絶句した。
「私たち3人、この辺り似たようなものです」
 美砂が言い、理絵子は頷いた。理絵子が力の分類に拘らない理由の1つがここにある。オカルト主導の定義に依る時、どう解釈して良いか困る現象が多々あるからだ。どころか、分類通りに単純化できず、つまみ食いのように幾つかの力が複合して働いている場合の方が多い。これとて意図して念動を使っているわけでは無い。バリアみたいなものが形成されているのか、高温の領域が生じているのか。ただ“濡れたくない”と思っているだけでそうなる。
 果たして、組長らは雪の上にぺたりと正座した。
「お願え(おねげえ)しますだ。どうがお願えしますだ……」
 土下座状態。まるで何かに“観念した”かのようだ。
「腰をお上げになって下さい。むしろ私どもの力が生かせるなら光栄なこと」
 美砂の声の背後で襖が開かれ、夫妻らが奥の間から出てきた。寒気の侵入に気付き、玄関開けっ放しで何事かと思ったのであろう。
「話がまとまりました。しばし暇乞いをいたしたく」
 美砂が言った。雪の付着しない状態……に、夫妻らは気付いていない。
「美砂ちゃんも行くんかい?」
 女将さんが尋ねた。主人氏がボリュームを落とす。
「ええ、恐らくわたくし一人になることは許されますまい。旅館の方はサボタージュになってしまいますが」
「宿はいいけど……」
「行かせてあげんね(あげなさい)」
 母君が言った。
 柔らかく微笑みすら浮かべたその表情は何らの心配もしていない、合格確実な受験に送り出す祖母、そんな風情だ。
 
(つづく)

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