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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-067-

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 自分の身を越えて伸びる影は、風に舞うヴェールを纏う。
 セレネであった。
「(貴国の安保理命令違反は許せません)」
 ヴェールの傍らに、硬質で機械的な影が併存。
 レーザガン。
「(撃て!)」
 誰とも知れぬ命令が走り、赤十字とはんてんが自分をかばい、覆い被さる。
 銃声と、同じ数の跳弾の甲高いパルスが響く。
 セレネに何も無いことはテレパシーを駆使するまでも無かった。
「(ニンジャだ)」
 そのとんちんかんな感想に、何があったかレムリアは知った。セレネはレーザガンで撃ったのではなく、弾丸の悉くを銃身で弾き返したのだ。その結果、ここが日本であり、相原の服装も手伝っていよう、セレネの超人反応を忍者と見たのだ。
 面白がっている自分を認識する。出血は多いものの、止血処理され横たわっているせいで脳への血流が確保できているのだろう。少し落ち着いて事態を把握している。
「(多国籍軍を通じてわたくしたちの捕縛命令が出たのは確かです。しかし、生死を問わず逮捕せよとは国連を装った貴国議員の勝手な指令)」
 セレネは言い、指をパチンと鳴らした。
『……これで例の船が正義の味方気取りで出てくるだろう。MTLで焼き殺せ』
 船がラウドスピーカーで音を出す。言わずもがな盗聴の録音である。そして、
「(ヘルムズ・J……この声の主です)」
 セレネの言葉に、かの国の放送禁止用語に相当する四文字語と共に銃を放り出したのは、ジャップとのたまったアフリカ系兵士。
 ヘルムズ・J。相原が船長代理として乗り組んだミッションにおいて、アルゴ号は同人が運営していた有色人種専門の生物化学兵器研究所を破壊した。
 合衆国の負の側面最たる所、人種差別。
 それでも、否、それゆえに一定の支持があるのであり、応じて同人は上院議員であり、当然極右であることから、政権・軍部に応じた人脈を有する。
 
(つづく)

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