アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-073-
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時々、心配そうに自分の顔を見下ろす。
「隊長、彼女を搬送する準備が出来たようですが」
衛生担当官の小声。
「了解」
自衛官が小声で応じ。
「(断る。この者達は現在我が国におり、我が国の法が適用される。まず非居住者各位にあっては入国管理法違反、密入国の容疑で逮捕する。そして相原殿、貴殿はその幇助、及び、外国為替及び外国貿易法第25条、無許可役務取引-えきむとりひき-の疑いで逮捕する)」
逮捕と言われ、相原は目をまるくしてきょとんとし、しかし、
「(役務?あーこの船大量破壊兵器に関する技術満載ですからねー。ボクそれを非居住者に許可無く教えましたからねー)」
その、台本棒読みの如き言い回しにレムリアはついに吹きだした。
炎のように痛くて今度は気絶しそうになる。
「笑ったりしたら駄目だよ」
衛生担当の自衛官の注意。
日本政府・当局が故意に逮捕することで身柄を保障するつもりであることは確認するまでも無かった。相原もそれを承知で“罪を認めた”のだ。
大丈夫だろう。そう安心したらスッと意識が飛んだ。
7(終章)
東京・信濃町(しなのまち)。
神宮球場にほど近い、著名な私大病院の一室で、相原は目を覚ました。
そこは11階にある6人部屋で、相原はベッドの脇、付き添い用の簡素な椅子に座った状態。浴衣をまとった己れを見、思い出したように周囲を見回す。そして痛そうに腰に手をし、痛くなった首をバキボキ言わせる。椅子に座ったまま寝込んだのだ。
左方は空きベッドが二つあって窓。窓の外は明治神宮の緑と、立体交差の高速道路。高速道路は通常通り(?)渋滞しており、昨日の混乱の影は見えない。
そして右前の方、部屋の向こう半分には、真ん中のベッドにのみ使用者がいる。老夫婦であり、ベッドには夫の男性が上半身を起こした状態、奥さんの方が相原と同じく椅子に座してテレビを見ている。そこで男性が酷い咳をし、奥さんに背中をさすってもらう。
(つづく)
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