アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-076-
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「起きて……」
レムリアは目を開く。星のような輝きを蔵した、黒々と透明な瞳。
比して、相原は、真っ赤。
「お・は・よ」
彼女は軽い笑顔と共に言った。脇腹貫通したこととは関係ないと思うが、吹っ切れた、すっきりした気分だ。ちょっと苦しいぐるぐる巻の包帯。手首に刺さった輸液管。
「お、お目醒めですか」
相原は首を絞められたような、掠れた声で言い、しかしハッと気付いたようにレムリアの顔を覗き込み、小さく頷く。
自分の様子を見ている。
「ごめんね、テレパス娘で」
レムリアははにかんだ。含めて、相原の気持ちは、わざわざ音声に具象化してもらわなくても、判った。
面映ゆい。だから、からかい半分、意地悪で、言ってみた。
ちょっと面白そうだ、とも思った。
すると。
相原は隠しても無駄と諦めたか、はたまた腰を据えたのか、フッと笑い、そして、自分の手は握ったまま、配管剥き出しの白い天井を見上げた。
「彼女のためだったら僕の血を全部抜いたっていい、臓器だって使える物なら全部使っていい、とにかく彼女を助けてくれ……」
今度はレムリアが赤くなる番だった。
「この娘は僕には何より大事な女の子なんだ。この位のことで死なせないでくれ」
相原は、レムリアに顔を戻した。
そして、レムリアもフッと笑った。
「ずうっとそばにいてくれたんだ」
レムリアは相原の手を握り返した。
呼応して早くなる相原の脈拍。
「まあね。あ、ごめんよ……離すから」
「ううん。いいよ」
レムリアは手を離そうとする相原のその手を、その必要は無い、とそのまま握った。
「そうか、それであんな夢見たんだ」
「え?」
レムリアは目を閉じた。
「そう。夢。いつもと違う不思議な夢。でもそれが、あなたがそばにいたせいだったのなら、納得できる。何か夢見た憶えは?」
(つづく)
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