アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-079-
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相原は誤魔化すように言って、諦めたように笑った。
このひと可愛い、それがレムリアの思ったこと。
すると相原は急に少年のような顔になり、
「恥ずかしいぞ」
「なんで?」
レムリアは小首を傾げて尋ねた。
それが“可愛い仕草”であるという認識はある。ただ、意図してそうしたわけではない。
「およそ22の男が……屈したんだぞ」
「あたし嬉しいよ。ああこの人あたしのこと凄く素敵に大切に考えてくれてるんだなあって。そりゃちょっと照れくさいけどさ」
レムリアははにかんだ。
好き、と言われてドキッとしたことは応じた回数あるが、素直に“ありがとう”と言える気持ちになったのは初めてだ。
ただ、自分が好きだからか、と言われると違う。否、好きという感情を持ったことが無いのでワカラナイと言った方が正確かも知れぬ。
結論、楽しい。
「あなたはあたしのことが好き」
「ぶっ……ええい唐突に何を言う。そういうことは明確に言語化して喚呼確認するでない。君はテレパスの使い方を間違っている。判っておればよろしい。言わすな恥ずかしい」
やっぱり楽しい。
「え?いいじゃん別に。あなたの気持ち、凄く嬉しいよ、ありがと」
レムリアは自分でも驚くほど素直に、自動的に、言った。
そして判った。この男には“いかに相手を傷つけず自分の気持ちを伝えるか”という苦労がいらないのだ。
すると相原は急に真面目な顔に戻り、何か言いかけたが、そこまで。
「お邪魔かな」
トーンの低い利発そうな若い女性の声がし、部屋の入り口部分の壁が二回ノックされた。
看護師である。雑貨屋の大きな紙袋。
「気が付いたね。じゃあ熱測ろうか。ハイはんてんの騎士は何も見ない何も聞こえない」
看護師は軽妙な語り口で言いながら、その紙袋から相原愛用のはんてんを取り出すと、目隠しするように相原の頭にかぶせた。
(つづく)
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