アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-080-
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「洗濯してあるから持ってきな。着ていた服も置いとくよ。えーっと、彼女は何か食べるかな?」
「はい。じゃぁ」
言われて意識したら急に空腹を覚えた。
相原ははんてんをかぶったまま、微動だにしない。はんてんの形状もあり、消えそびれた幽霊のようだ。とぼけた感じが珍妙。
「殊勝でよろしい。そのまま何も見るな」
看護師は相原に命じると、傷の状況をチェックし、体温を測るように指示した。
その間相原は微動だにしなかった。
はんてんを取ることが許可されたのは、体温計が測定終了の電子音を鳴らした後。
看護師はレムリアから体温計を受け取り、覗き込んだ。
37.5度
「七度五分か、傷深いからまあそんなもんだろうね。じゃ食事持ってくるから。そうそう、あなたカルテ作りたいんだけど名無しのゴンベさんなのよ。はんてんの騎士はフルネームも歳も知らないって言うし……日本人じゃないんだって?」
「ええ、私は……」
言われて思い出す。彼は自分が“魔法少女レムリア”としか知らない。
「いいよ、あとで。ひとまわりしたらあなたの持ち物も持ってくるから、その時で。おいはんてんナイト、不適合の注意事項は覚えてるな。頼むぞ」
「え?あ……」
相原が反応する前に看護師は姿を消していた。
レムリアはくすくす笑った。
「面白い人だね。あんたもね」
「そうかぁ?でもここの看護師万事こんな調子だよ。結構しんどい仕事のはずなのにいつもニコニコしててそれをおくびにも出さない。ここを指定した理由のひとつ。滅法明るいべ?不安な気持ちにならない」
「指定?選んだの?」
「まぁね。オレなりに最高の病院と信じて。……だからあまり言わすなそういうこと」
レムリアが覗き込んだら相原は照れた。
面白い。
(つづく)
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