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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-081-

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「それで、だね」
 相原は話題を変えた。照れ隠しだ。
「はい?」
「めまいとか、どこかかーっと熱い感じがあるとか、ないか?」
 相原はレムリアの手首を取って脈を診た。
 クスクス笑うと傷に来る。その脈絡の無さ、その唐突さ。
 多分看護師が言い残していった“不適合の注意事項”に基づく質問だとは思うが。
 何も話題が無かったらどう話を持っていったのだろう。
 不適合?
「あのー、大変恐れ入りますが、ドクターに言われたことをそのままお話し頂いた方が、逆に手っ取り早い気がしますが。あなたが間違った理解をされるとは思いませんが」
 レムリアは言った。自分の身体に予見される変調なら、申し訳ないが専門外の相原を介すより自分が直接意識した方が多分。
「400CC」
 相原はレムリアの腕を指さして言った。
 何その婉曲すぎて螺旋状態の表現。
「え?」
「やはりそれでは判らんか。俺の血が少し」
 輸血されたのだ。レムリアは理解した。
 ちょっと待った。
 理由は判らぬ。輸血なんて茶飯事であって驚くことでは無い。対象が自分と言うだけ。
 なのに、激しく動揺している自分がいる。
 全身が熱くなる。何だろうこの恥ずかしさは。
「お、おい熱いのか?」
「そうだけどそうじゃなくて」
 何だこれ。
「不適合反応は起こってないから」
「オレの血が身体の中巡ってるって?」
 ぎゃー!
 図星という日本語を理解する。そう、自分はそれを意識して唐突に恥ずかしくなっている。
「そういう反応しなくてもいいだろ。どうせ二週間だかで全部入れ替わるんだろ血液って。脾臓(ひぞう)ってそのためのもんだって聞いたぞ」
「でもさ。なんかさ」
 レムリアは下を向いてしまった。恥ずかしくてまともに顔が見られない。
 
(つづく)

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