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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-084-

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「日本のような看護と平和を世界に……道理でペラペラだし箸も上手に……お使いになる、というべきね。ハイネス」
「ちょっと」
 相原は看護師の手から雑誌を横取りし、記事の本文を読み始めた。
「……世界各国の難民キャンプや野戦病院に医療補助を行っている国際医療ボランティア、欧州自由意志医療派遣団に、このほど現役世界最年少の看護師が誕生した。彼女はメディア・ボレアリス・アルフェラッツ様、13歳である。アジアとヨーロッパの境界に位置する小国、アルフェラッツ王国のレッキとした王女様だ。姫は幼少のみぎりから困っている人を助けたいという希望を強く持っておられ……」
 相原は丸い目をしてレムリアを見上げた。
「王女様なの!?」
 大きな声は老夫婦が振り向くほど。
 しかし、老夫婦の反応はそれだけ。普通、日本の大学病院と浴衣を着た異国の姫という組み合わせは、存在しない。
「そういうことになりますね」
 姫の名を持つ少女は、ニコッと笑ってシャケの切り身を口の中に放り込んだ。
 相原は記事を数ページめくる。挿入されたグラビアに写っているナースキャップの彼女。王宮の庭だろうか、乗馬はおろかポロのスティックを操る彼女。どこかに国賓として家族で訪れた時のものだろう、めいっぱい着飾って豪華な彼女。
「姫」
「はい」
「看護師さんコレ普通の入院食……」
 相原は尋ねた。
「ええ、さすがに冷めたからレンジでチンしたけどね」
「レッキとした王族の娘が都内の病室で浴衣をまとい、レンジでチンしたシャケ弁当を食べているの図」
「あのー描写しないでいただけますかねあんぱん騎士殿」
「これは失礼。しかしホントに?」
「ホントに」
「ホントのホントに?」
「ホントのホントに」
「だとしたら国賓待遇じゃ……」
 
(つづく)

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