アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-087-
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「やっぱりレムリアだ。ってか、よくさぶいぼなんて言葉知ってるな」
「いいよそっちで。私だって……その、ボランティア活動の芸名とでも言うかな、ニックネームそっち使ってるから。メディアなんてマスコミかディスクじゃあるまいし、ましてや姫だの王女だの……ガラにもない」
「でも王女様なんだし…気が引けてさ。某国だってそういう血筋の方は宮様って呼んでるし」
「嫌、血筋は意識したくない」
「なんで。プリンセスは女の子の憧れ、ってのが童話の定番だし、グレース・ケリーとか、某国でも似たような事案は国あげて羨望のまなざしだけど」
相原のシンプルな質問にレムリアは答えを躊躇った。普通の女の子は姫様になれると聞いたら喜ぶであろう。比して最初から姫だと姫なりの事情があるのだ。
恐らく、今後のことを考えると、彼には正直に話すべきなのだろう。が、今それを全て話すのは時期尚早、というか、おのずと知ってもらう時が来る、そんな気がする。
なので。
「いい思い出ないもん。多分その宮様にも大なり小なりあると思うよ」
レムリアは目線を外した。
相原は両の手を広げて軽く持ち上げた。アメリカ映画で諦念の意思表示に使われるジェスチャー。
「判ったごめん立ち入ったこと訊いて。レムリアとしか呼びません」
「いいよ、別に」
レムリアは笑った。ごめんね。
すると、相原は薄笑みを浮かべて。
「姫君か。船乗って奇蹟を起こして回る姫ね……いいじゃんか、ミラクル・プリンセスだな」
「えっ……」
「かっこいいじゃねぇか。姫様舞踏会でドレス引きずり回してるだけじゃねえぞってな」
レムリアはブッと吹いて笑った。姫様イメージぶちこわし。
彼の目が、レムリアを見る目に戻ったと知った。
「副長とか、どうしただろ」
話題を変える。“最大の懸念”が解決したせいだろう、次の心配はそっち。
(つづく)
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