アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-092・完結-
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「手伝います。私もナースです」
レムリアは血を拭うこともせず、ストレッチャーの下にあったAEDを見つけて中を開けた。
看護師のPHS電話機が鳴る。
「はい、判りました。今AEDを……すぐ行きます」
看護師が応じ、電話を戻す。
「オペ室へ行きます。じゃあ悪いけど一緒に」
「もちろん。学、お母様のほうお願い」
レムリアは言うと、看護師らと共に、ストレッチャーを押して風のように去った。
相原は半ば唖然とし、次に口の端に笑みを浮かべ、後ろ姿を見送った。
「あの……おじいさんは……」
夫人が心配そうに相原を見上げる。
「大丈夫です。ちょっと出血したようです」
相原は膝小僧をすりむいたかのように軽く言った。
「でも」
ベッドは血の海であり、一部したたり落ちるほど。
「大丈夫、彼女……医療奉仕活動やってましてね。世界中で沢山の人々を助けてます。自分も同じように心臓止まり掛けましたがこのように。彼女のおかげです。待って下さいね。今後の対応について看護師に連絡を取り……ああ」
相原は言うと、自分が座っていた椅子を夫人に勧めた。そこへ、連絡を受けたのだろう、先の愉快な看護師が小走りで到着。
「あれ?坂口(さかぐち)さ……」
夫人が所定の位置にいないためか、見回す。
「こっちです。大丈夫です。落ち着いてらっしゃいます。ベッドの交換を……」
看護師は夫人が移ったことに気づき、表情を緩める。
「オーケイ。手配する……もう一度洗濯だねそれ」
「ですかね。で、お母様どうしましょう。説明を受けられたいと思うんだけど」
相原の言葉に、看護師は小気味よいとばかり、口の端に笑み一つ。
「ご案内しますのでこちらへ」
看護師は夫人を伴って立ち、出入り口で立ち止まると、相原を振り返る。
「彼女は?」
「止めて聞くよなタマでなし」
「そういうことか。鬼だね」
「いや、魔女という方が正確」
アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部・了
(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト・終)
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