【理絵子の夜話】犬神の郷-21-
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続きを登与の指が読む。相次ぐ村人の失踪に困った時の長(おさ)が陰陽師を招聘したところ、巫女を立ててナマズに対峙せよとの託宣を得た。その巫女の条件というのが。
・陰陽道に通じていること
・背丈五尺以下の美しい生娘であること
・この集落の者では無いこと
「集落の者で無いというのは……」
「拝み倒して死んでもらうか、よそ者攫ってこい」
「しかし陰陽道に通じていれば、人さらいが来たことぐらい感知するでしょうに」
「本当に通じていればその意思汲んで死なずにナマズを倒すはず、と」
「連れて来ていきなりさぁ戦えってのも凄いねしかし」
彼女達の会話はまるで午後の喫茶店である。楽しげですらあり、応じて組長らの顔に驚愕の色がありあり。
登与が指を止める。
「手放しで戦えってわけでもないようです。戦い方も書いてあります一応……犬神を召喚しろ」
「おお」
「い、犬神様を……?」
少女らと組長らは全く相反する反応を示した。すなわち少女らは興味津々であり、組長らは畏怖である。
「むしろ、そのために巫女に対する身体的条件が課せられているようです。犬神をおびき出すために“子どもの匂い”が必要なのだとか。子どもを食うために出てきた犬神を子ども自らが術で操り従わせろ」
人が動物を意のままにする……一般にしつけや訓練の範疇であるが、
そこに属さないパターンを先ほど少女らは自ら示し、組長らは目撃した。
当然、その事実が物を言うことに気付いたようだ。
「おでら(俺達)も、その辺の話は聞いたことがあるだが……」
「無理だ、出来っごねぇ、って思ってた。でも」
理絵子は頷いて見せた。
「恐らく犬神と意志を交換し、私たちの意図を理解させることは可能であろうと思われます……」
(つづく)
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