【理絵子の夜話】犬神の郷-26-
屋根上の積雪であろう、堰切ったように白い塊が玄関先に落ち、集まっていた人々を追い散らす。猟銃氏には塊が命中したらしく倒れ込んで失神。
そこで美砂が制するように右手をあげたら、地震がピタリと収まった。
理絵子の認識では、美砂は終わりを知って腕を上げただけなのだが、無論信心深い人々には、彼女と地震が関連づけられて認識された。
攻撃心が急速に畏怖と崇拝に入れ替わって行く。
「組長さん、今ので同じように落雪で埋もれた方が無いか、探すべきだと思います。私たちのことはその後でも充分」
美砂は提案して立ち上がった。
「私たちもお手伝いします」
「お、おお、判った」
集まった人々の反応を待つでなく、どころか組長氏らが立つより早く、彼女たちは小走りで集会所を後にした。
「高千穂さん右手から奥の方へ」
「私は左側から行くよ」
理絵子の指示得て登与が走り、美砂は自ら行く手を指さして早足。
雪の上を雪無いかのように彼女達は歩く。或いは走る。
ただその事実に人々は気付いていないようである。雪かきされた部分を選んで彼女達に付いてくる。
そこで理絵子は気付く、否、示唆を得る。これは、自分達に対する、テスト。
倒壊している家屋有り。
雪に半分埋もれていること、折れた柱の断面がまだ新しいことから、今の地震により崩れたと判断する。
人がいそうな気配はあるがテレパシー反応せず。即ち意識無し。
超感覚フル駆動して良かろう。過去認知・ポストコグニション。
曰く、雪かきの準備中地震に遭い、慌てて飛びだしたところで埋もれた。
どの位置に?
「すいません!こっちに人手を」
理絵子は叫びながら場所の特定を試みる。
雪に埋もれて体温は急降下であろう。闇雲に掘らず一発で特定したい。
(つづく)
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