【魔法少女レムリア短編集】夜無き国の火を噴く氷-08-
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『えらい大はしゃぎだな彼は。……ああ、回路ったって、ロケットエンジンの燃焼系の回路なんだよ。燃料の性質知らずして燃焼制御回路作れるはずもないだろ?お前直接行ってこいと。まぁ君の悩みには解決の心当たりあるから、ついでに寄らせてもらうよ。じゃぁ決まりでいいね、タネの仕込みの指示をするぞ。まずその彼に……衛星写真で夜景を貼り合わせて世界地図に仕立てたのネットにあるべ、北朝鮮が真っ暗なやつ。アレの日本を見せてやってくれ』
(アレの例)
それが〝夜無き国〟に他ならないことに彼女は気付いた。
……日本から何か持ってくるのか?
『で、1週間待っててね、っと。その病院のマジックショーに設定してもいいぜ。手品みたいなもんだし』
それは少し意地悪が見え隠れする口調。え、ちょっと待って。
「あの……それで火を噴く氷の正体って?……自分で訊いておいて悪いんだけど」
『教えてあげません』
彼は勝ち誇ったように言った。
からかわれた気がして、彼女はぶ~と膨れたくなった。が、そういう心理を抱いたことに少し罪悪感もあり。
『それは内緒ってことで。お前さん自身も知らない方が彼のワクワクも更に増すってもんでしょ。なんだ大したことない、って君が思ってしまったら、彼にも以心伝心するしね。ナゾはナゾのままに。たまにはオレにも魔法を使わせてくれ。じゃぁ追加あればネットで』
彼は電話を切った。
そして一週間後。
〝魔女のレムリアのマジックショー〟は、昼食後の30分イベントとしてホールで開催された。併設のホスピスからも多くのお年寄りにも来てもらい、大いに楽しんでもらった。
日本の彼はイベントの最初姿が見えずヒヤヒヤしたが、気が付くと観衆の後方に立ち、次第を見ていた。そこには面白がって見学に来ていた病院スタッフもいたのだが、彼は背の丈167センチの日本人であって、メガネを掛けてスーツ姿であることから、埋もれるでもなく探すに労するでもなく。表情を変えず、慣れた風に、観衆を驚かせる彼女を見ていた。
(つづく)
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