【魔法少女レムリア短編集】夜無き国の火を噴く氷-15-
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(スキポール空港・読者様ご提供m(_ _)m)
オランダの空の玄関、国際空港スキポールはロッテルダム近郊にある。
「火を噴く氷って税関でガーガー言われなかった?」
カマ掛ける。掛けてからズキッと胸が痛む。どうして正面から訊けない自分。
「いんや。こっちの現地法人に高圧凍結で作らせたものだから。人造だよ。宇宙に燃料持ってく際の保管形態候補」
相原学は声音を変えずに言った。ならいい。だったらいい。本当に出張だったなら。
自分の爪の力が強くなる。痛いだろうなと思うが力が抜けない。抜くことが出来ない。逆にいっそうかじりつくような状態。
ただ、相原は身じろぎもしない。
「私あなたに頼りすぎてる。だからって私、あなたに残酷なこと言わせようとした。サンタなんかいないんだよって話をあなたに押しつけようとした」
「君は何でも一人で解決しようと思いすぎてる……否定じゃない。大人なら当然の心理だ。習い性ってのもあるんだろうけどさ。でも、もっと堂々と利用してくれていいんだぜ。チームで解決するってのも大人のミッションのスタイルだし、その、パートナーのコミュニケーションだと思うし」
付け加えた言葉のちょっと照れて。心臓の音が良く聞こえる状態なので、リズム変わる程のドキドキは良く判る。
彼の気持ちは炎。
自分に対する気持ちは炎。
それは知ってる。そして居心地はいい。ただ、肯定も否定も返したことはない。
出会ってどのくらいになるだろう。
「でも……私がちゃんとマヌエルに話していれば……話さなくちゃ」
「言える性格か?言ったら逆に君じゃないだろ」
その言葉に、レムリアは自分でも驚くほど身体がびくりと震えた。
顔を見上げたいが涙ぐしゃぐしゃ見せたくないので目一杯ワイシャツにしがみつく。
「むしろ電話してくれてオレもエエカッコでけたな、そんな認識。ただ、次は切羽詰まる前に電波飛ばしてくれ」
「物わかり良すぎ」
ワイシャツの中で声が籠もった。嬉しいが悔しい。
「オレお前好きだもん。好きな女に全力出して文句あるか」
相原は言うこと言って彼女を、しかしそっと、腕の中から解放した。
姫君を城に返すように。
「あの……」
彼を見上げる自分の顔が涙だらけなのは判ってる。
(次回・最終回)
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