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【理絵子の夜話】犬神の郷-35-

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「本来は向こうまで尾根が続いていた、かな?」
「それが崩れた。地震で」
 そういう認識の元に見渡すと、露わになった土砂の部分は風化しているようには見えない。向こう側の尾根下には地下水脈があったようで、断ち切られた水道管のように水が流れ出、谷底に達している。谷底の水流は更にその部位の雪と土とを溶かしたらしく、クレバスを形成し、その中に流れ落ちている。群馬県だと思ったが、吹割の滝を思い出させる。
「向こう側なの?」
 理絵子は問うた。犬の表情からして本来はそうだろう。
「これ降りて登って……急だなぁ」
「飛ぶ?」
 ギャグマンガのようであるが、美砂に関する限り、それはふざけているのでは無いことに理絵子は気付いた。
 彼女は恐らく飛べるのだ。その筋の用語でレビテーション・空中浮揚。だが蛇使いのコブラのようなひょろひょろフワフワした挙動ではあるまい。弘法大師空海、役の小角が可能であったと言われる自由飛行を意味しよう。
 が、しかし。
「いや待って。その、この新たに出来た地形は古文書の……」
「ああ、お股っちゃお股だね。降りようか」
「君たち……いい?」
 理絵子は犬に訊いた。対して、
 あなたに従います。それが犬たちの答え。
 いやちょっと待った。
 


 
 超感覚を備えた娘が3人も揃ってその時点まで気付かないとはどうしたことか。
 牙を剥き、唸る犬たちに促されるように振り返ると“何か”がいる。
 五体の造作は人間のようであり、しかし頭部中央に大きな目が一つ。鼻孔であろうか穴一つ。耳まで裂けた口には乱ぐい歯。顎の幅や形が上下で違う。結果かよだれがダラダラ垂れて荒い息づかい。
 全裸であり体毛薄いが平気なようだ。オスと見られ性的に興奮した状態。……但し、そこ、は人間のそれとは到底思えぬ、異様かつ巨大。
「単眼症(作者註:ネット検索するな)、巨人化し四肢先端肥大、ミュータントで超能力を備える……学術的にはそんな感じ?キュクロプスのいわれの元って感じ」
 
(つづく)

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