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【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-01-

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 咲き誇る花たちがケシの花だと知っている。
 それがなぜ大規模に栽培されているかも知っている。
 彼女達を乗せたワンボックス車は、およそ欧州の水準からは〝道〟とは言えない悪路を盛大に揺れ走る。道無き道という表現があるが、単に〝帯状に連なるケシの無いところ〟。
「車酔い、ないか?」
 口ひげを生やした地元ガイドが訛りの強い英語で彼女に尋ねる。
「ええ」
 彼女は答える。運転席以外シートが撤去され、殆ど貨物車然とした車中は人種民族様々だ。彼女はその中で唯一女性、どころか少女であり、日本の繁華街を歩いていても不思議でない容姿をしている。肩に触れない程度にカットした短い黒髪、マンガのヒロイン向きといえる大きな瞳と、〝ころん〟とした丸みを帯びた顔立ち。
 但し彼女は日本人ではない。
「この〝姫〟ならこの位どうということはないと思う」
 オーストリアから参加している碧眼の男性が答える。但し強い日差しから色素薄い目を守るため、サングラスをしている。
 車が止まる。エンジンが止まり、運転手氏がホールドアップ。少しそのまま時が過ぎ、ケシの波のただ中に取り残されたよう。予測の出来ない状況に会話が途切れて誰しも黙り込む。たまに風が吹いてクルマが揺れる。
 やがて近づく複数の男あり。ひとりが彼女達の座る荷室の窓を銃口でコンコン。
 口ひげガイド氏が応対し、現地の言葉が交わされる。彼女は12の言語を操るが、ここの言葉は守備範囲外。
 ワンボックス車の後部扉が開かれ、西側映画のステレオタイプ的テロリストそのままの男が2名、一同に銃を突きつける。すなわち、地域の装束をまとい、頭部には巻物。弾帯を2本タスキにして身体に巻き、銃はカラシニコフ突撃銃(要するに機関銃)。
 地元の反政府ゲリラであり。
「検問です」
 ガイド氏が言った。ここから先は彼らの実効支配地域ということ。ガイドを介して現地語で説明する。
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(つづく)

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