【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-02-
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彼女達国際医療ボランティア、欧州自由意志医療派遣団(European Free-will Medical care Mission:EFMM)は、この先に内戦復興事業で巡回病院キャンプを設営している。その近所で子ども達の間に伝染病の疑いが発生、当該部族の専属対応として許可されたのが彼女である。青い眼のオーストリアスタッフは身辺警護。
「(そいつは?子どもか?女は女みたいだが)」
「(とんでもない。東洋人は童顔なだけだ。我々の貴重なスタッフだ。子ども達には好かれる。だから最適と連れてきたんだ)」
ガイド氏の通訳を介し、検問係とオーストリアスタッフがやりとり。指差す代わりに銃口を振り向けるので殺伐で仕方がない。体のいい差し棒というわけだ。応じてオーストリアスタッフのこめかみには汗が浮かぶ。
「(聞いてた話と違うから同行させてもらうぜ。お前は降りろ)」
検問係のうち、ひとりが乗り込んできた。出発を許可する条件を2つ提示される。オーストリアスタッフはここで引き返せ。そして、代わりにこの乗り込んだ男がキャンプまで同行する。
「(しかし、自分は彼女の警護を)」
「(黙れ)」
これ見よがしにカチャリと音を立て、銃の安全装置を外す。その鉛筆でも扱うような気軽さには、殺人機械を扱う慎重さは微塵もない。そもそも殺人に禁忌を感じていないであろうから、こっちが狼狽えても始まらない。文字通り殺すための道具であり、殺虫剤スプレーと変わらない。
「私なら大丈夫ですから」
彼女は答えた。それどころか、むしろ食い下がって危険なのは彼の方。
「しかし……」
「銃で撃たれた経験があると度胸が据わるので」
ウソではない。
「判りました。最近の女の子は強すぎる。では、申し訳ないがご無事で」
彼は銃口に突かれながらすごすごとクルマを降りた。まるで自分が彼をやりこめたかのようだ。
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(つづく)
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