【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-03-
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ドアを閉めてすぐに発つ。検問係が後ろを見、検問所が見えなくなると向き直り、彼女を見てニヤニヤ。
「(日本人かお前。可愛いなぁ)」
実際にはもう少し下品なことを言ったが略す。彼が言うには日本人ボランティアは内戦終結後よく見かけるという。……シルクロードのこちら側に極東系の民族は見分けにくいはずだが、〝武器を持たない東洋人〟は日本人だけという認識なので、自分もそうかと訊いてみた由。
「(アメリカの犬め)」
皮肉っぽく追加。
「私は違いますけどね。日本にも友達がいます。一つだけ名誉のために言わせてもらうと、かの国は宗教の違いで毛嫌いしたりはしません」
彼女は敢えて日本語で言った。目的はそれなりに日本知ってますよという意思表示。言葉尻の雰囲気や強さの伝達。
通訳氏が困惑。
「(日本語か?何て言ったんだ?)」
英語で言い直し、通訳、現地語。
「(だったら何故アメリカに媚びを売る)」
「(そうしないとクルマを買ってくれないから、と聞きました)」
それは日本の知り合いに言われた事。日本をヨイショしてくれるのはいいが、海外では親米と捕鯨の点で噛みつかれることが多いから、問われたら模範解答としてそう答えろ。
意趣返し。
すると、のべつ剣呑だった印象の検問係が笑った。
「(トヨタは好きだぜ。壊れない。サムライが作ってるんだろ?)」
彼は言い、盛大に揺れる車内で腰からごついナイフを取り出した。
銃は背中にひょいと回す。安全装置は解除したままなので下手にぶつけると暴発するが、気にしている素振り無し。
「(サムライは世界一の剣術使いだ。知ってるぜ。お前も実はサムライ女か?)」
風切り音が、とは言わないが、走る車中も構わずかなりの勢いでそのナイフを振り回す。すなわち完全に日本人と勘違いされているがまぁいいだろう。彼らから見た場合、どこの宗教圏にも属さない日本は不思議であり、その中立性は会話に有効。
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(つづく)
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