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【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-05-

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 レムリアは医療キャンプには日があるうちに着いた。ガイドとワンボックスは即座に引き返し、一方彼女は許可あるまでキャンプから出るなと厳命された。それは疲れたから休めというより、警戒の様子見と判断するのが恐らく正しかろう。その間にキャンプのスタッフから概況をレクチャー。
 結局一晩留め置かれ、翌、夜が明けて程なく、その何もない乾燥地を走ってくる少年の姿有り。時計の針は4時25分。
 伝令である。彼らはこちらに〝受診〟には来ない。〝往診〟のみ許可される。敵の中に入って行こうとはしない。
 彼女は気付いて目が覚め、彼が目覚まし代わりにカラシニコフを中空へぶっ放す前に起き上がった。
「(来てもいいぞ)」
 少年はキャンプのそばまで来、銃口を天に向けたまま、片言の英語で言った。……敵対する異教徒の言語を勉強したことになるが、何のことはない、彼らが奉じるテロリストのスパイ養成合宿で習って来たのだという。
 無論、欺き近づくために。敵を知るにはまず言語から。
 彼女は頷き応じると、他のスタッフを起こして回った。一般に4時半に起こしに来るなど嫌がらせに近いが、この地では彼らのルールが絶対なのだ。5秒後に逆のことを言えば、5秒後からはそれが新しい法。
 許可を得て洗面と携帯食料の朝食を済ます。その間じっと待っていた彼を昇った朝日が照らす。日焼けした肌に天然パーマの黒髪。ブラウンの瞳。引き締まった表情は戦士であるという自覚もあろう、大人びて見える。体躯は絞り込まれ筋肉質であり、小柄なサッカー選手のそれを思わせ敏捷そうな印象。そして背中にはカラシニコフ。
「(お前か、子ども係は)」
 レムリアが差し出した紙コップの紅茶を断り、彼は訊いた。次いで医師や看護師の白衣は怖がると言われたので、白いTシャツの上に水色のカーディガンを羽織る。下はくすんだグリーンのGパン。
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(つづく)

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