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【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-06-

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 以下邦訳を意味するカッコ付けを略す。
「ええ、初めまして」
「お前も子どもじゃないか」
 一般にシルクロードの西から東を見た時、女性は童顔で小柄であるため、大人か子どもか区別が付かないという。確かにオトナには見分けが付かないかも知れぬ。が、子どもには相手が近しいかどうかそれと判るもの。
 彼女の実際の年齢は、14歳。それで看護師というのも希少であろう。
「虫歯があるでしょ。何か食べると歯が痛い」
 指摘したら、果たして彼は驚いた。
「見ただけで何故判る!?」
「看護師ですから」
 当たり前のように言ってちょっと自尊心をくすぐってみる。……ただし、看護師というのは本当だが、虫歯を見抜いたのはその結果というわけではない。彼女には、先のニンジャ能力に通ずる秘密が少々ある。
「それよりも子ども達に流行り病と聞いて来たんだけど」
「そうだ。お前の他にも誰か来るのか?看護婦と医者じゃ違うだろう」
 手を上げたのは短く刈った金髪に碧眼の男性スタッフ。小児科医。スイスから。軽妙な会話が子どもに人気。但しここで通用するという保証はない。
「了解した。言っておくが、お前に許したのは病気の子を看ることだけだ。指定した場所以外に1インチでも動けば殺す」
 少年は銃に手を掛け再度強調した。住居内は神聖であり、基本的に同じ民族しか入れない。そのため彼らは当初、異教徒でない丸腰の女医師を寄越せと要求した。対して同じ肌の色した看護婦(元の交渉文言が看護「婦」である)なら用意できると応じたところ、許可されたのが彼女である。以下、族長と何度も協議し懇々と説得したところ、丸腰の女である上、コーカソイドでないことが決め手となったとか。それでも、これ以上は絶対に無理という妥協点として特認中の特認だそうである。ちなみに女を指定した意図は、何かあっても素手で殺せるという理由による。……彼らにとって女は単なる柔弱な存在、しかし一族の存続に不可欠だから保持しておく、程度の認識。
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(つづく)

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